
「今度、新しい案件をお願いしたいのですが、御社は『ISO27001』を取得されていますか?」
「取引条件として、ISO27001(ISMS)の取得が必須になりました」
取引先から突然こんなことを言われて、慌てて検索している担当者様や経営者様も多いのではないでしょうか。
しかし、いざネットで調べてみると、出てくるのは「機密性」「完全性」「要求事項」といった難しい専門用語ばかり。
「結局、何をすればいいの?」「いくらかかるの?」という一番知りたい情報にたどり着く前に、読むのが辛くなってしまいますよね。
そこでこの記事では、難しい定義や条文の解説は一旦脇に置き、ビジネスの現場で本当に必要な「本音の情報」だけをまとめました。
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これから取得を検討する初心者の方向けに、「ISO27001とは何か」を専門用語を一切使わずにやさしく解説します。
まずは、この規格の正体から見ていきましょう。
目次
1.【3分でわかる】ISO27001(ISMS)とは?

「ISO27001」という言葉を聞くと、なんだか難しそうなIT用語に聞こえますよね。
でも、仕組み自体はとてもシンプルです。身近なものに例えてわかりやすく解説してみましょう。
1-1.一言でいうと「情報の安全を守るための『免許証』」
ISO27001を一番わかりやすく例えるなら、「車の運転免許証」のようなものです。
あなたがもし、初めて会う人に「私は車の運転が上手で、絶対に事故を起こしません」と言われたとします。
口で言うだけなら誰でもできますから、「本当かな?」と少し不安になりますよね。
でも、その人が「ゴールド免許」を見せてくれたらどうでしょうか?
「ああ、警察(第三者機関)が認めた優良ドライバーなんだな」と、客観的に信用することができます。
これを企業に置き換えてみましょう。
- 「うちはセキュリティ対策バッチリです!」と言う→相手は本当かどうかわからない(不安)。
- 「ISO27001認証(免許証)を持っています!」と見せる→「第三者機関が『この会社は情報を安全に扱っている』と認めたんだな」と証明できる。
つまりISO27001とは、「あなたの会社の情報管理は安全ですよ」と、偉い人(審査機関)にお墨付きをもらうことなのです。
1-2.よく聞く「ISMS」と「ISO27001」の違い
勉強を始めると、必ず「ISMS(アイエスエムエス)」という言葉もセットで出てきて混乱しがちです。
こちらも整理しておきましょう。
- ISMS(Information Security Management System)=「仕組み」や「ルール」のこと。
(例:運転手が日々行っている「一時停止する」「スピードを守る」という安全運転の行動そのもの) - ISO27001=「合格基準」のこと。
(例:免許を取るための「交通ルールブック」や「試験の採点基準」)
会社の中に「ISMS(安全なルール)」を作り、それが「ISO27001(合格基準)」を満たしているかをテストしてもらう。
そのテストに合格すると、晴れて認証マークがもらえる、という関係性です。
2.ただのルール作りではない!ISO27001を取得する3つのメリット

ISO27001の取得は、決して安くはない費用と手間がかかります。
それでも多くの企業(日本国内だけで7,000社以上)が取得しているのは、それ以上の「ビジネス上のメリット」があるからです。
ここでは、経営者や営業担当者が特に実感しやすい3つのメリットを紹介します。
2-1.「信頼」が可視化され、大手企業と取引しやすくなる
これが最大のメリットと言っても過言ではありません。
上場企業や大手企業は、取引先を選ぶ際に非常に厳しい「セキュリティチェック」を行います。
「御社のセキュリティ体制はどうなっていますか?」
「この何十項目もあるチェックシートに回答してください」
こう言われた時、ISO27001を持っていないと、膨大な資料を作成して説明しなければならず、最悪の場合「体制が整っていないので取引不可」と断られてしまうこともあります。
しかし、ISO27001を持っていれば話は別です。
「弊社はISO27001を取得しています」と伝えるだけで、面倒なチェックが免除されたり、「それなら安心だ」と即決で口座が開設できたりします。
つまり、ISO27001は大手企業とビジネスをするための「優先入場パスポート」のような役割を果たしてくれるのです。
2-2.官公庁などの「入札案件」に参加できる
もし御社が、国や自治体の仕事(入札)を取りに行きたいと考えているなら、ISO27001は強力な武器になります。
多くの官公庁の入札案件では、参加条件(参加資格)としてISMS(ISO27001)の取得を求めているケースが増えています。
また、必須でなくても「持っていれば点数を加算する(加点評価)」という案件も多くあります。
競合他社と金額や提案内容が拮抗している時、この「ISOによる加点」が勝敗を分けることも珍しくありません。
販路を広げるための投資として、非常に効果的です。
2-3.社内の「うっかりミス」が減り、事故を防げる
「サイバー攻撃」や「ハッキング」と聞くと、高度な技術の話に聞こえますが、実は情報漏えい事故の多くは以下のような「社員のうっかりミス(ヒューマンエラー)」が原因です。
- メールの宛先(To/Cc/Bcc)を間違えて一斉送信してしまった
- USBメモリをカフェに置き忘れた
- パスワードを付箋に書いてパソコンに貼っていた
ISO27001に取り組むと、こうした「当たり前のこと」をルール化し、社員教育を行うことになります。
「面倒なルールが増える」のではなく、「社員がうっかりミスで加害者になるのを防ぐ」ための防波堤を作ることができるのです。
3.ISO27001取得までの4ステップ
メリットがわかったら、次は「実際、現場では何をするの?」という作業の中身を見ていきましょう。
大きく分けると、以下の4つのステップで進んでいきます。
3-1.ステップ1:ルールを作る(現状把握と文書作成)
まずは、会社の「情報セキュリティの法律」を作るところからスタートします。
いきなりルールブックを書くのではなく、まずは自分たちの状況を知ることから始めましょう。
- 資産の洗い出し:会社にどんな情報(PC、顧客名簿、契約書など)があるかリストアップする。
- リスク分析:それらの情報が漏れるとしたら、どんな原因(ウイルス?紛失?盗難?)があるか考える。
- ルール策定:リスクを防ぐためのルールを決めて、文書(マニュアル)にする。
| 【作業のイメージ】 ゼロから作るのは大変なので、ひな形(テンプレート)をもとに、「うちはここまで厳しくしなくていいか」「ここはもっと細かく決めよう」と修正していく作業が中心です。 |
3-2.ステップ2:ルール通りに運用してみる(教育・実施)
立派なマニュアルを作っても、棚に飾っておくだけでは合格できません。
「決めたルール通りに仕事をしている」という実績(証拠)作りが必要です。
- 全社員にセキュリティ研修を行う(テストを実施する)。
- 入退室記録を毎日つける。
- 来訪者の記録を残す。
- PCのウイルスソフトが最新かチェックする。
これらを最低でも3ヶ月程度続け、「ちゃんとルールが守られています」という記録(ログ)を貯めていきます。
3-3.ステップ3:予行演習をする(内部監査)
本番の審査を受ける前に、「社内テスト」を行います。
これを「内部監査」と呼びます。
社内の担当者(またはコンサルタント)が審査員役となり、「パスワードは定期的に変えていますか?」「机の上に重要書類を出しっぱなしにしていませんか?」と、他の社員をチェックして回ります。
ここでもし不備が見つかれば、本番までに修正します。
3-4.ステップ4:本番の試験を受ける(審査)
いよいよ、外部の審査機関による本番の審査です。
審査は通常、2回に分けて行われます。
- 第1段階審査(文書審査):作ったマニュアルの内容におかしいところがないか、書類を中心にチェックします。
- 第2段階審査(現地審査):審査員が会社にやってきます。実際に社員にヒアリングしたり、オフィスを見て回り、「ルール通りに運用されているか」を厳しくチェックします。
この2つの審査をクリアし、指摘された軽微なミスを修正すれば、晴れて「ISO27001認証取得」となります。
4.実際、どれくらいの「期間」と「費用」がかかる?

取得までの流れがわかったら、次は「具体的にいくら用意すればいいの?」「いつ取れるの?」というのが気になるところですよね。
会社の規模や業種によって変動はありますが、ここでは「従業員数名〜数十名規模のIT・オフィス系企業」を想定した、リアルな目安をお伝えします。
4-1.取得までの期間目安(通常は「半年〜1年」)
ISO27001は、今日申し込んで来週もらえるものではありません。
取得するには作ったルールを実際に社内で運用し、その実績(ログ)を貯める期間が必要だからです。
- 一般的なペース:6ヶ月〜10ヶ月
- 準備・ルール作り:3ヶ月
- 運用・修正:3ヶ月
- 審査・認証発行:2ヶ月〜
- お急ぎコース(コンサル活用):最短4ヶ月〜
- プロに書類作成をほぼ丸投げし、最短スケジュールで進めた場合です。ただし、その分費用は高くなる傾向があります。
「取引先から『来月までに取って』と言われた!」というケースもあるでしょうが、物理的に1ヶ月で取得するのはほぼ不可能です。
取引先には「現在取得準備中で、〇月頃に取得予定です」と伝えて待ってもらうのが一般的です。
4-2.費用の内訳(審査費用+コンサル費用+人件費)
費用は大きく分けて「必ずかかるお金(審査費用)」と、「手間を省くためのお金(外部支援費用)」の2つがあります。
A.審査費用(必ずかかる)
審査機関(テストをする人たち)に支払うお金です。会社の人数や拠点の数で決まります。
- 初期審査:約50万円〜100万円(初年度のみ)
- 維持・更新審査:約30万円〜50万円(2年目以降、毎年)
B.コンサル・ツール費用(外部支援)
自力でやるか、プロに頼むかで大きく変わります。
パターン | 費用の目安 | 特徴 |
1.完全自力 | 0円 | 費用は浮くが、担当者が勉強して書類を1から作るため、数百時間の残業(人件費)が発生する覚悟が必要。挫折率も高い。 |
2.クラウドツール利用 | 月額数万円〜 | テンプレートや進行管理ツールを使うパターン。適度なサポートがあり、コスパが良い。 |
3.フルサポートコンサル | 100万円〜200万円 | コンサルタントが書類作成から面接練習まで手取り足取りやってくれる。高いが一番確実でラク。 |
トータルとして、初年度は「最低でも100万円〜200万円くらい」の予算感を持っておくと安心です。
「高いな…」と感じるかもしれませんが、これで大手との取引が決まればすぐに回収できる投資額とも言えます。
5.取得後の負担は?更新審査について

実はISO27001は取ってからも審査が続きます。
車の免許証に有効期限があるのと同じで、ISO27001にも有効期限があります。
一度取れば一生有効なわけではなく、定期的に「ちゃんとルールを守り続けていますか?」というチェックを受け続けなければなりません。
5-1.一度取って終わりじゃない!「3年のサイクル」
ISO27001の認証は、基本的に3年更新です。
具体的には、以下のようなスケジュールで審査が繰り返されます。
- 1年目(取得):厳しい審査をクリアして認証ゲット!
- 2年目(維持審査):簡易的なチェック。「去年決めたこと、サボらずやってますか?」程度。
- 3年目(維持審査):簡易的なチェック。
- 4年目(更新審査):免許更新の年。もう一度、全体的なしっかりした審査を行う。
「えっ、毎年審査があるの?」と面倒に感じるかもしれませんが、2年目・3年目の審査(維持審査)は、最初よりもチェック項目が少なく、短期間で終わることがほとんどです。
5-2.「形骸化」させないコツ
取得後に現場が疲弊してしまう一番の原因は、「実態に合わない無理なルールを作ってしまうこと」にあります。
「パスワードは100文字以上で、毎日変更する」
「部長の承認印がないと、メール1通送れない」
審査に通りたい一心でこんな「ガチガチのルール」を作ってしまうと、現場は守りきれません。
結果、「ルールはあるけど誰も守っていない(=形骸化)」という状態になり、次の審査で不合格になってしまいます。
ISO27001運用のコツは、「守れないルールは、書き換えてしまう」ことです。
実は、セキュリティさえ担保できていれば、ルールは途中で変更しても構いません。
「このルール、厳しすぎて仕事が遅くなるな」と思ったら、「安全、かつ現実的なレベル」にマニュアルを修正する。
これを繰り返すことで、年々「自社にフィットした使いやすい仕組み」になっていきます。
6.まとめ:ISO27001は「信頼」を売上に変えるツール
ここまで、ISO27001(ISMS)について、専門用語を使わずに解説してきました。
最後に、重要なポイントをもう一度おさらいしましょう。
- ISO27001とは:情報セキュリティの「免許証」。安全な会社であることを証明する最強のカード。
- メリット:大手企業との取引や入札参加など、「売上アップ」の武器になる。
- 運用のコツ:最初から完璧を目指さず、「身の丈に合ったルール」から始めること。
- 費用と期間:半年〜1年、100〜200万円程度が目安(従業員数等による)。
ISO27001の取得には、確かに安くはない費用と、社員の労力がかかります。
しかし、それを単なる「コスト(出費)」と捉えるか、会社の信頼性を高めて売上を伸ばすための「投資」と捉えるかで、結果は大きく変わります。
もし、取引先から取得を求められたり、今後の事業拡大で必要性を感じているなら、それは御社が「もうワンランク上のステージ」に進むタイミングかもしれません。
まずは自社の状況に合わせて、無理のないスケジュールで検討を始めてみてはいかがでしょうか。
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#ISO27001



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