
棚卸しを行った結果、帳簿上の在庫数と実際の在庫数が合わず、「なぜ差異が出たのか」「どこから確認すればよいのか」と悩んでいないでしょうか。
棚卸差異は、棚卸し当日の数え間違いだけでなく、入荷時の検品漏れ、出荷時のピッキングミス、返品・不良品の処理漏れ、在庫データの入力ミスなど、日々の在庫管理のズレが表面化したものです。
差異を放置すると、在庫切れや過剰在庫、出荷ミス、会計処理のズレにつながるおそれがあります。
そのため、差異が出た商品を修正するだけでなく、原因を特定し、再発防止策まで落とし込むことが重要です。
この記事では、棚卸差異の原因、差異率の計算方法、許容範囲の考え方、差異が大きい場合の影響、差異を減らすための対策を実務視点で解説します。
目次
1. 棚卸差異とは
棚卸差異とは、帳簿上で管理している在庫数と、実際に倉庫や店舗にある在庫数が一致しない状態のことです。
たとえば、在庫管理表やシステム上では「100個」と記録されているにもかかわらず、実際に数えてみると「95個」しかない場合、5個分の棚卸差異が発生していることになります。
反対に、帳簿上は100個でも実在庫が105個ある場合も、在庫数が一致していないため棚卸差異にあたります。

棚卸差異は、「在庫差異」と呼ばれることもあります。
どちらも、帳簿在庫と実在庫のズレを指す言葉として使われることが一般的です。
ただし、棚卸差異は棚卸し作業そのものだけが原因で発生するわけではありません。
実際には、入荷時の検品漏れ、出荷時の記録ミス、保管場所の変更、返品や不良品の処理漏れなど、日々の在庫管理業務の中で生じたズレが、棚卸しのタイミングで見つかるケースが多くあります。
そのため、棚卸差異を減らすには、棚卸し当日の数え間違いを防ぐだけでなく、普段の入出庫管理や在庫データの更新方法まで見直すことが重要です。
| 棚卸しの意味や目的、基本的な流れを詳しく知りたい方は、関連記事「棚卸しとは?意味・目的・基本手順をわかりやすく解説」も参考にしてください。 |
2. 棚卸差異が発生する主な原因

棚卸差異は、棚卸し当日の数え間違いだけで発生するものではありません。
入荷・出荷・保管・返品・データ更新など、日々の在庫管理のどこかで小さなズレが生じ、その結果として棚卸し時に差異が判明するケースが多くあります。
そのため、差異を減らすには「どの商品で差異が出たか」だけでなく、どの業務工程でズレが発生した可能性があるかを確認することが重要です。
まずは、棚卸差異の主な原因と、原因別に確認すべき記録・対策を整理しておきましょう。

原因 | 起きやすい場面 | 確認すべき記録 | 対策 |
入荷ミス | 納品時 | 発注書・納品書・検品記録 | 入荷検品の二重確認を行う |
出荷ミス | ピッキング時 | 出荷指示書・ピッキングリスト・出荷実績 | バーコード検品や出荷前確認を行う |
移動記録漏れ | 倉庫内移動・別倉庫への移動 | ロケーション変更履歴・移動記録 | 保管場所変更時の記録ルールを統一する |
返品・不良品の処理漏れ | 返品受付・廃棄・サンプル利用時 | 返品処理履歴・不良品処理記録・廃棄記録 | 通常在庫と区別して管理する |
カウントミス | 棚卸し当日 | 棚卸表・担当者記録・再カウント結果 | ダブルチェックやカウントルールの統一を行う |
入力ミス | 在庫データ更新時 | 入出庫履歴・更新日時・修正履歴 | 手入力を減らし、承認フローを設ける |
紛失・破損・盗難 | 保管中・持ち出し時 | 破損報告・廃棄記録・持ち出し記録 | 保管ルールや持ち出し管理を見直す |
上記のように、棚卸差異の原因は複数の業務工程にまたがります。
ここからは、それぞれの原因について、起こりやすい場面と確認すべきポイントを詳しく見ていきます。
2-1. 入荷時の検品漏れ・数量違い
入荷時の検品漏れや数量違いは、棚卸差異が発生する代表的な原因です。
たとえば、発注書では100個の商品を発注しているにもかかわらず、実際には98個しか納品されていなかった場合、そのまま在庫データを100個で登録してしまうと、2個分の差異が発生します。
入荷ミスが疑われる場合は、発注書・納品書・検品記録を照合します。
特に、納品書の数量をそのまま在庫登録している場合は、実際の検品数とズレがないかを確認しましょう。
2-2. 出荷時のピッキングミス・誤出荷
出荷時のピッキングミスや誤出荷も、棚卸差異につながりやすい原因です。
たとえば、A商品を10個出荷するはずが、誤ってB商品を10個出荷してしまった場合、A商品は帳簿上では減っているのに実在庫は残り、B商品は帳簿上では残っているのに実在庫が減っている状態になります。
このようなミスは、商品名や型番が似ている場合、保管場所が近い場合、出荷作業が属人化している場合に起こりやすくなります。
出荷ミスが疑われる場合は、出荷指示書・ピッキングリスト・出荷実績・送り状を照合します。
商品名や型番が似ている商品、保管場所が近い商品は、誤出荷が起きていないか重点的に確認しましょう。
2-3. 在庫移動・保管場所変更の記録漏れ
倉庫内で商品の保管場所を変更した際に、その移動記録が残っていないと、棚卸差異として認識されることがあります。
たとえば、商品を一時的に別の棚や別倉庫へ移動したにもかかわらず、在庫管理表やシステム上のロケーション情報を更新していない場合、元の場所では「在庫が足りない」、移動先では「在庫が余っている」ように見えてしまいます。
移動記録漏れが疑われる場合は、ロケーション変更履歴や倉庫間移動の記録を確認します。
帳簿上の保管場所だけでなく、一時置き場や別倉庫、返品置き場なども確認すると、現物が見つかるケースがあります。
2-4. 返品・不良品・サンプル品の処理漏れ
返品商品、不良品、サンプル品、社内利用品などの処理漏れも、棚卸差異の原因になります。
たとえば、顧客から返品された商品を在庫に戻したにもかかわらず、システム上では返品処理をしていない場合、実在庫は増えているのに帳簿在庫には反映されません。
反対に、不良品として廃棄した商品を在庫から差し引いていない場合は、帳簿上の在庫数だけが多く残ってしまいます。
返品や不良品の処理漏れが疑われる場合は、返品処理履歴、不良品処理記録、廃棄記録、サンプル品の持ち出し記録を確認します。
通常在庫に戻す商品と、廃棄・交換・サンプル利用する商品が混在していないかを確認することが重要です。
2-5. 棚卸し当日のカウントミス
棚卸し当日のカウントミスも、棚卸差異の直接的な原因です。
特に、商品数が多い場合、似た商品が並んでいる場合、箱単位・バラ単位が混在している場合は、数え間違いが起こりやすくなります。
また、担当者ごとに数え方が違う、カウント済みの商品が分かりにくい、棚卸表への記入ルールが統一されていないといった場合も、差異が発生しやすくなります。
棚卸し当日に差異が出た場合は、すぐに帳簿在庫を修正するのではなく、まず再カウントを行い、単位や保管場所、記入内容に誤りがないかを確認しましょう。
カウントミスが疑われる場合は、棚卸表、担当者記録、カウント済みチェック、再カウント結果を確認します。
箱単位とバラ単位の混在、カウント済み商品の重複、未カウント商品の見落としがないかを重点的に見直しましょう。
2-6. 在庫データの入力ミス・更新タイミングのズレ
在庫データの入力ミスや、更新タイミングのズレも棚卸差異の原因になります。
たとえば、入荷数や出荷数を手入力している場合、数量の打ち間違いや商品コードの選択ミスが起こることがあります。
また、実際には出荷済みの商品がシステム上ではまだ在庫として残っている、反対に入荷済みの商品がまだ在庫に反映されていない、といったタイムラグも差異につながります。
特に、受注管理・出荷管理・在庫管理を別々の表やシステムで管理している場合、データの反映漏れや二重入力が起こりやすくなります。
入力ミスや更新タイミングのズレが疑われる場合は、入出庫履歴、更新日時、担当者、修正履歴を確認します。
実際の入出荷タイミングとシステム上の更新タイミングにズレがないかを追跡しましょう。
2-7. 紛失・破損・盗難
紛失・破損・盗難も、棚卸差異の原因になることがあります。
たとえば、保管中の商品が破損したにもかかわらず廃棄処理がされていない場合、帳簿上は在庫が残ったままになります。
また、小型商品や高額商品は紛失に気づきにくく、棚卸しのタイミングで初めて不足が判明することもあります。
紛失・破損・盗難が疑われる場合は、破損報告、廃棄記録、持ち出し記録、防犯カメラの記録、担当者への聞き取りを行います。
特に、小型商品や高額商品は管理ルールが曖昧だと差異が見つかりにくいため、保管場所や持ち出しルールもあわせて見直しましょう。
棚卸差異の原因を特定できれば、次回以降の棚卸しだけでなく、日々の入荷・出荷・保管・データ更新の精度改善にもつなげられます。
3. 棚卸差異が大きいとどうなる?
棚卸差異が大きい状態を放置すると、在庫数のズレだけでなく、販売機会、保管コスト、会計処理、顧客対応にも影響が広がります。
特に、帳簿上の在庫数をもとに受注・発注・出荷判断をしている場合、実在庫とのズレが大きいほど、欠品や過剰在庫などの問題が起こりやすくなります。
まずは、棚卸差異が大きい場合に起こりやすい影響を整理しておきましょう。
| 影響 | 起こること | 主に関係する部門 |
| 在庫切れ | 受注後に出荷できない、販売機会を逃す | 営業・出荷・CS |
| 過剰在庫 | 不要な発注が増え、保管コストが上がる | 購買・倉庫・経理 |
| 調査・修正業務の増加 | 再カウントや履歴確認に時間がかかる | 倉庫・管理部門 |
| 会計・利益への影響 | 売上原価や在庫金額の把握にズレが出る | 経理・経営層 |
| 顧客対応・納期遅延 | 納期変更、キャンセル、問い合わせ対応が増える | 営業・CS・出荷 |
なかでも、棚卸差異によって起こりやすいのが「在庫切れ」と「過剰在庫」です。
帳簿在庫と実在庫のどちらが多いかによって、発生する問題が変わります。

たとえば、帳簿在庫が実在庫より多い場合は、在庫がある前提で受注してしまい、出荷時に欠品が判明する可能性があります。
反対に、帳簿在庫が実在庫より少ない場合は、在庫不足だと判断して不要な発注をしてしまうことがあります。
3-1. 在庫切れによる販売機会損失
帳簿上は在庫があるにもかかわらず、実際には在庫が不足している場合、受注後に出荷できない、必要なタイミングで販売できないといった問題が発生します。
結果として、注文キャンセルや納期遅延が発生し、販売機会を逃す可能性があります。
特に、売れ筋商品やキャンペーン対象商品で在庫切れが起こると、短期間で売上に大きく影響するため注意が必要です。
3-2. 過剰在庫による保管コスト増加
不要な発注が増えると、保管スペースが圧迫され、倉庫費用や管理工数が増える原因になります。
食品・日用品・季節商品などは、保管期間が長くなることで劣化や型落ち、廃棄リスクも高まります。
過剰在庫は、資金繰りや利益率にも影響する問題です。
3-3. 棚卸後の調査・修正業務が増える
棚卸差異が大きいほど、棚卸後の確認作業や修正業務に時間がかかります。
差異が出た商品について、再カウントを行い、入荷履歴・出荷履歴・返品処理・在庫移動記録・データ更新履歴などを確認する必要があるためです。
差異の件数が多い場合、通常業務と並行して原因調査を進めることになり、現場担当者や管理者の負担が大きくなります。
3-4. 会計処理や利益計算に影響する
棚卸差異は、会計処理や利益計算にも影響します。
在庫は売上原価や期末棚卸高の計算に関わるため、帳簿在庫と実在庫に大きなズレがあると、利益が実態と異なる形で計算される可能性があります。
特に、商品単価が高い商材や在庫金額が大きい企業では、少量の差異でも金額ベースでは大きな影響になることがあります。
棚卸差異は数量だけでなく、金額でも確認することが重要です。
3-5. 顧客対応・納期遅延につながる
棚卸差異は、顧客対応や納期にも影響します。
帳簿上の在庫をもとに「すぐに出荷できます」と案内した後で、実際には在庫が不足していることが判明すると、納期変更や注文キャンセルの対応が必要になります。
法人取引の場合、納期遅延が取引先の業務や販売計画に影響することもあります。
在庫数が正確でない状態が続くと、問い合わせ対応やクレームが増え、取引先からの信頼低下につながるおそれがあります。
このように、棚卸差異が大きいと、在庫管理だけでなく販売・出荷・経理・顧客対応にも影響が広がります。
影響の大きさを把握するには、差異の有無だけでなく、差異率や差異金額を確認することが重要です。
4. 棚卸差異率の計算方法
棚卸差異を確認するときは、差異の個数だけでなく、棚卸差異率もあわせて確認することが重要です。
棚卸差異率とは、帳簿上の在庫数に対して、実在庫との差がどれくらいあるかを示す指標です。
差異率を計算することで、商品ごとのズレの大きさを比較しやすくなります。
4-1. 棚卸差異率の計算式
棚卸差異率は、以下の計算式で求められます。
| 棚卸差異率(%)=(実在庫数 − 帳簿在庫数)÷ 帳簿在庫数 × 100 |
この計算式では、帳簿在庫を基準にして、実在庫がどれくらい多いか、または少ないかを確認します。
実在庫が帳簿在庫より少ない場合はマイナス、実在庫が帳簿在庫より多い場合はプラスの差異率になります。
差異の大きさだけを確認したい場合は、プラス・マイナスを除いた絶対値で見ることもあります。
| 差異率の絶対値(%)=|実在庫数 − 帳簿在庫数|÷ 帳簿在庫数 × 100 |
原因分析ではプラス・マイナスの方向を見ることが重要ですが、商品ごとの影響度を比較する場合は、絶対値で確認すると優先順位をつけやすくなります。
4-2. 計算例
たとえば、帳簿在庫が100個、実在庫が95個の場合、棚卸差異率は以下のように計算します。
| (95個 − 100個)÷ 100個 × 100 = −5% |
この場合、帳簿上は100個あるはずの商品が、実際には95個しかないため、5個不足している状態です。
棚卸差異率は−5%となります。
反対に、帳簿在庫が100個、実在庫が105個の場合は以下のようになります。
| (105個 − 100個)÷ 100個 × 100 = 5% |
この場合、帳簿上は100個のはずの商品が、実際には105個あるため、5個多い状態です。棚卸差異率は5%となります。
以下のように整理すると、差異の方向がわかりやすくなります。
帳簿在庫 | 実在庫 | 差異数 | 棚卸差異率 | 状態 |
100個 | 95個 | −5個 | −5% | 実在庫が不足している |
100個 | 105個 | 5個 | 5% | 実在庫が多い |
500個 | 490個 | −10個 | −2% | 実在庫が不足している |
20個 | 15個 | −5個 | −25% | 差異率が大きい |
4-3. プラス差異とマイナス差異の違い
棚卸差異率を見るときは、数値の大きさだけでなく、プラス差異なのか、マイナス差異なのかも確認します。
プラス差異とは、帳簿在庫よりも実在庫が多い状態です。
たとえば、帳簿上は100個のはずが、実際には105個ある場合、5個分のプラス差異が発生しています。
返品処理の漏れ、入荷登録の遅れ、出荷処理の誤りなどが原因として考えられます。
一方、マイナス差異とは、帳簿在庫よりも実在庫が少ない状態です。
たとえば、帳簿上は100個のはずが、実際には95個しかない場合、5個分のマイナス差異が発生しています。
出荷処理漏れ、ピッキングミス、破損・紛失、カウントミスなどが原因として考えられます。
差異の種類 | 状態 | 考えられる原因 |
プラス差異 | 帳簿在庫より実在庫が多い | 返品処理漏れ、入荷登録の遅れ、出荷処理の誤り、カウントミス |
マイナス差異 | 帳簿在庫より実在庫が少ない | 出荷処理漏れ、誤出荷、破損・紛失、廃棄処理漏れ、カウントミス |
プラス差異は「在庫が多いから問題ない」と考えられがちですが、実際にはデータ処理や業務フローにズレがある状態です。
原因を確認せずに放置すると、次回以降の在庫管理や発注判断にも影響します。
4-4. 商品ごとに計算すべき理由
棚卸差異率は、全体の合計だけでなく、商品ごとに計算することが重要です。
全体の差異率だけを見ると、差異が相殺されてしまうことがあります。
たとえば、A商品で5個不足し、B商品で5個多かった場合、全体では差異がないように見えるかもしれません。
しかし実際には、A商品とB商品の両方で在庫管理上のズレが発生しています。
また、同じ5個の差異でも、商品ごとの在庫数や単価によって影響度は異なります。
帳簿在庫が20個の商品で5個不足していれば差異率は−25%ですが、帳簿在庫が1,000個の商品で5個不足している場合は−0.5%です。
さらに、高単価の商品で差異が出ている場合は、数量が少なくても金額面で大きな影響になることがあります。
棚卸差異率は、商品ごとに計算することで、どの商品から原因調査を始めるべきかを判断しやすくなります。
特に、差異率が大きい商品、差異金額が大きい商品、繰り返し差異が出る商品は優先的に確認しましょう。
| 棚卸差異をエクセルで管理したい場合は、関連記事「エクセル棚卸表の使い方|無料テンプレートで差異を見える化」も参考にしてください。 |
5. 棚卸差異の許容範囲はどれくらい?
棚卸差異率の許容範囲は、業種や商品単価、在庫回転率、管理体制によって異なります。
そのため、「何%以内であれば必ず問題ない」と一律に判断することはできません。
一般的には、棚卸差異率は数%以内を目安とするケースが多くあります。
ただし、高額商品や医療関連品、部品の欠品が生産停止につながる商品などでは、1%未満の差異でも大きな問題になることがあります。
反対に、取り扱い点数が多い商品や、単価が低く入出庫頻度が高い商品では、一定の差異が発生しやすい場合もあります。
重要なのは、差異率の数値だけで判断するのではなく、差異が発生した商品・金額・頻度・業務への影響をあわせて確認することです。
5-1.許容範囲を判断するときの考え方
棚卸差異の許容範囲を考える際は、以下のような観点で判断するとよいでしょう。
判断する観点 | 確認すべきポイント |
商品単価 | 高単価の商品は、少量の差異でも金額影響が大きい |
在庫回転率 | 入出庫が多い商品は差異が発生しやすい |
欠品時の影響 | 欠品が販売機会損失や生産停止につながるか |
差異の頻度 | 毎回同じ商品・工程で差異が出ていないか |
差異金額 | 数量は少なくても、金額ベースで影響が大きくないか |
管理レベル | 業種や取引先の要求水準に合っているか |
たとえば、同じ差異率2%でも、低単価の商品と高単価の商品では影響度が大きく異なります。
また、在庫数が多い商品では差異率が小さく見えても、差異金額にすると大きな損失になっている場合があります。
5-2.差異率だけでなく、差異金額も確認する
棚卸差異を評価する際は、差異率だけでなく差異金額も確認しましょう。
たとえば、差異率が1%でも、単価が高い商品であれば金額面の影響は大きくなります。反対に、差異率が高くても、単価が低く業務への影響が小さい商品であれば、優先度は相対的に下がることもあります。
許容範囲を決める際は、自社の商品特性や管理レベルに合わせて基準を設け、基準を超えた場合に原因調査や再発防止策を行うルールを決めておくとよいでしょう。
6. 棚卸差異が出たときの調査手順
棚卸差異が出た場合は、すぐに在庫数を修正するのではなく、差異の大きい商品から順に原因を確認することが重要です。
原因を確認しないまま帳簿在庫だけを修正すると、次回の棚卸しでも同じ差異が発生する可能性があります。
差異が出た商品を一覧化し、差異率や差異金額をもとに優先順位をつけながら、入出庫履歴や保管場所を確認していきましょう。
6-1. 差異が出た商品を一覧化する
まずは、棚卸しで差異が出た商品を一覧化します。
商品名、商品コード、帳簿在庫数、実在庫数、差異数、保管場所などをまとめることで、どの商品にどれだけ差異が出ているかを把握しやすくなります。
このとき、差異が出た商品だけでなく、担当者や確認日、再カウントの有無も記録しておくと、後から原因を追跡しやすくなります。
記録項目 | 内容 |
商品名・商品コード | 差異が出た商品を特定する |
帳簿在庫数 | 在庫管理表やシステム上の数量 |
実在庫数 | 棚卸しで確認した実際の数量 |
差異数 | 実在庫数 − 帳簿在庫数 |
保管場所 | 倉庫・棚番・ロケーション |
担当者・確認日 | 誰がいつ確認したか |
再カウント結果 | 数え間違いの有無を確認する |
| 棚卸し当日の進め方や事前準備を確認したい方は、関連記事「棚卸しのやり方を実務フローで解説|事前準備・当日の進め方・終了後の確認まで」も参考にしてください。 |
6-2. 差異率・差異金額で優先順位をつける
差異が出た商品を一覧化したら、すべてを同じ優先度で調査するのではなく、差異率や差異金額をもとに優先順位をつけます。
たとえば、差異数が同じ5個でも、在庫数20個の商品で5個不足している場合と、在庫数1,000個の商品で5個不足している場合では、差異率が大きく異なります。
また、単価が高い商品は、少量の差異でも金額面の影響が大きくなるため、優先的に確認する必要があります。
優先的に確認したいのは、差異率が大きい商品、差異金額が大きい商品、高単価の商品、売れ筋商品、毎回差異が出る商品です。
差異の件数が多い場合は、すべてを一度に調査するのではなく、影響の大きい商品から順に確認しましょう。
6-3. 入荷・出荷・返品・移動履歴を確認する
優先順位をつけたら、対象商品の入荷・出荷・返品・在庫移動の履歴を確認します。
棚卸差異は、棚卸し当日のカウントミスだけでなく、日々の業務処理のズレによって発生していることがあります。
たとえば、入荷数の登録漏れ、出荷処理の誤り、返品商品の在庫戻し漏れ、倉庫内移動の記録漏れなどです。
確認する際は、以下の記録を照合します。
確認する履歴 | 見るべきポイント |
入荷履歴 | 発注数・納品数・検品数にズレがないか |
出荷履歴 | 出荷指示と実際の出荷数が一致しているか |
返品履歴 | 返品商品が在庫に戻されているか |
不良品・廃棄記録 | 廃棄した商品が在庫から差し引かれているか |
在庫移動履歴 | 保管場所の変更が記録されているか |
修正履歴 | 手動で在庫数を変更した記録がないか |
特に、差異が発生した日だけでなく、前回棚卸しから今回棚卸しまでの期間で履歴を確認することが重要です。
期間を区切って確認すると、どのタイミングで在庫数がズレたのかを追いやすくなります。
6-4. 現物の保管場所を再確認する
履歴を確認しても原因が分からない場合は、現物の保管場所を再確認します。
棚卸差異に見えていても、実際には商品が別の棚や一時置き場、返品置き場、出荷待ちエリア、別倉庫などに保管されているケースがあります。
特に、保管場所を変更した際に記録が残っていない場合、帳簿上のロケーションと実際の保管場所が一致しなくなります。
通常の保管棚だけでなく、一時置き場、返品置き場、出荷待ちエリア、不良品置き場、別倉庫なども確認しましょう。
商品名だけでなく、型番・JANコード・ロット番号・数量単位まで確認すると、似た商品の取り違えや箱単位・バラ単位の混同を防ぎやすくなります。
6-5. 原因を分類し、再発防止策を記録する
原因が分かったら、差異の内容を分類し、再発防止策を記録します。
たとえば、「入荷検品漏れ」「出荷ミス」「移動記録漏れ」「返品処理漏れ」「カウントミス」「入力ミス」などに分類しておくと、どの工程で差異が多いのかを把握しやすくなります。
原因分類と再発防止策は、以下のように記録しておくとよいでしょう。
原因分類 | 具体例 | 再発防止策 |
入荷検品漏れ | 納品数と登録数が異なっていた | 入荷時に発注書・納品書・検品数を照合する |
出荷ミス | 類似商品を誤って出荷していた | ピッキング時に商品コードやバーコードを確認する |
移動記録漏れ | 商品を別棚へ移動した記録がなかった | 保管場所変更時の記録ルールを統一する |
返品処理漏れ | 返品商品が在庫に戻されていなかった | 返品受付時の在庫反映フローを決める |
カウントミス | 箱単位とバラ単位を混同していた | 棚卸し前に単位や数え方を統一する |
入力ミス | 在庫数の手入力を誤っていた | 手入力を減らし、確認・承認フローを設ける |
棚卸差異の調査は、差異を修正して終わりではありません。
原因を記録し、次回の棚卸しや日々の入出庫管理に反映することで、同じ差異の再発を防ぎやすくなります。
最後に、調査結果をもとに「どの商品で」「どの工程で」「どのような差異が繰り返されているか」を確認しましょう。
繰り返し発生している差異は、作業者のミスではなく、業務フローや管理方法に課題がある可能性があります。
7. 棚卸差異を減らすための対策
棚卸差異を減らすには、棚卸し当日の確認作業だけでなく、日々の入荷・出荷・保管・返品・データ更新の精度を高めることが重要です。
差異の原因は複数の工程にまたがるため、「どこでズレが起きやすいか」を把握し、原因別に対策を行いましょう。
主な原因 | 対策の方向性 |
入荷・出荷時の数量違い | 検品ルールを統一する |
在庫移動・返品・不良品の処理漏れ | 記録ルールを決める |
保管場所のズレ | 棚卸し前にロケーションを整理する |
入力ミス・更新漏れ | 手入力を減らし、在庫データを更新しやすくする |
同じ差異の再発 | 原因を記録し、次回棚卸しに反映する |
7-1. 入荷・出荷時の検品ルールを統一する
入荷時や出荷時の確認ルールが担当者ごとに異なると、数量違いや誤出荷が発生しやすくなります。
入荷時は、発注書・納品書・現物の数量を照合します。
出荷時は、出荷指示書・商品コード・数量を確認し、似た商品や型番違いの誤出荷を防ぎましょう。
特に、高単価商品や出荷頻度の高い商品は、確認項目を明確にしておくことが重要です。
7-2. 在庫移動・返品・不良品の記録ルールを決める
在庫移動や返品、不良品処理の記録が残っていないと、棚卸し時に帳簿在庫と実在庫がズレやすくなります。
在庫が動いたタイミングで、移動日・移動元・移動先・数量・担当者を記録するルールを決めましょう。
返品品を通常在庫に戻すのか、不良品として扱うのか、サンプル品として持ち出すのかも明確にしておく必要があります。
7-3. 棚卸し前に保管場所を整理する
棚卸し前には、商品ごとの保管場所を整理し、通常在庫・返品品・不良品・出荷待ち商品を区別しておきましょう。
保管場所が曖昧なままだと、カウント漏れや重複カウント、別ロケーションの見落としが起こりやすくなります。
| 棚卸し当日のカウントミスを防ぐ具体策は、関連記事「棚卸しミスを減らす4つの対策|よくある原因と事前予防策を解説」も参考にしてください。 |
7-4. 手入力を減らし、在庫データをリアルタイムに更新する
手入力による在庫管理は、入力ミスや更新漏れが起こりやすくなります。
入荷・出荷・返品・在庫移動の情報を、できるだけ早く在庫データへ反映できる仕組みを整えましょう。
バーコードや在庫管理システムを活用すれば、商品コードや数量の入力ミスを減らし、入出庫情報を更新しやすくなります。
システム化の詳しい考え方は、後述の章で解説します。
7-5. 差異が出た原因を次回棚卸しに反映する
棚卸差異は、帳簿在庫を修正して終わりにせず、原因と対応内容を記録しておくことが大切です。
差異が出た商品、差異の内容、推定原因、対応内容、再発防止策を残しておくと、次回以降の棚卸しや日々の業務改善に活用できます。
毎回同じ商品や工程で差異が出ている場合は、作業者のミスだけでなく、保管場所・入出庫ルール・データ更新方法に課題がある可能性があります。
棚卸差異は、発生後の修正だけで終わらせず、原因を次回の棚卸しや日々の業務改善に反映することで、少しずつ減らしていくことができます。
8. 棚卸差異を減らすにはシステム化も有効

棚卸差異が毎回発生している場合は、棚卸し当日の作業だけでなく、日々の受発注・入出庫・在庫更新の仕組みを見直すことが重要です。
紙やエクセル、手入力による在庫管理では、入力ミスや更新漏れ、二重入力が起こりやすくなります。
また、受注管理・出荷管理・在庫管理が別々に運用されていると、データ反映の遅れによって帳簿在庫と実在庫にズレが生じやすくなります。
BtoB受発注システムや在庫管理システムを活用すれば、受注・出荷・在庫情報を一元管理しやすくなり、手入力や確認漏れを減らせます。
ただし、システム導入だけで差異がなくなるわけではないため、入荷・出荷・返品・在庫移動のルールを整理したうえで活用することが大切です。
| 棚卸システムの種類や費用、選び方について詳しく知りたい方は、関連記事「棚卸システムとは?種類・費用・導入効果と選び方をわかりやすく解説」も参考にしてください。 |
| 受発注業務と在庫情報をつなげて差異を減らす |
WONDERCARTは、BtoB取引における受発注業務を効率化するBtoB受発注システムです。 受注・出荷・在庫更新の情報を一元的に管理できれば、帳簿在庫と実在庫のズレを把握しやすくなり、棚卸差異の削減にもつながります。 |
9. まとめ
棚卸差異とは、帳簿上の在庫数と実際の在庫数が一致しない状態のことです。
差異の原因は、棚卸し当日のカウントミスだけでなく、入荷・出荷・保管・返品・データ入力など、日々の在庫管理業務にあるケースも多くあります。
本記事のポイントは以下の通りです。
- 棚卸差異は、帳簿在庫と実在庫のズレ
- 差異率・差異金額を商品ごとに確認する
- 差異が大きい商品から優先的に調査する
- 業務ルールとシステム化で再発を防ぐ
棚卸差異が大きい場合や、同じ商品・工程で繰り返し差異が出ている場合は、単なる在庫数の修正で終わらせず、日々の業務フローから見直していきましょう。
#棚卸し #差異



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