
システム開発のコストを大幅に抑える手法として、注目され続けている「オフショア開発」。
昨今の人材不足解消や、開発コストを3割〜5割削減できるというメリットは非常に魅力的ですが、その一方で「失敗事例」が後を絶たないのも事実です。
「納品されたものが仕様通りに動かない」
「コミュニケーションコストがかかりすぎて、担当者が疲弊してしまった」
「修正費用がかさみ、結局国内開発と変わらない金額になった」
オフショア開発を検討されている方の中には、こうしたネガティブな噂を耳にし、為替変動やカントリーリスクへの不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
確かに、国境を越えた開発にはリスクが伴います。
しかし、それらのリスクは適切な「知識」と「準備」さえあれば、コントロールすることが可能です。
本記事では、一般的に語られる「現地の品質やコミュニケーションのリスク」に加え、多くの企業が見落としがちな「発注側(自社)の準備不足に起因する内部リスク」まで深掘りして解説します。
実際に私たち新日本印刷が、ベトナムのオフショアパートナーと協業し、日本の複雑な商習慣に対応したBtoB受発注システム「WONDERCART」の開発に成功した経験に基づく、現場のリスク回避策です。
開発を成功に導き、貴社のビジネスを加速させるための「転ばぬ先の杖」として、ぜひ本記事をお役立てください。
【この記事でわかること】
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目次
1.オフショア開発で頻発する「4大リスク」

オフショア開発の失敗事例を紐解くと、その原因は驚くほど共通しています。
国や開発会社が違っても、日本企業が直面する壁は、大きく以下の4つのカテゴリに集約されます。
まずはリスクを知ることから始めましょう。
1-1. コミュニケーションの壁
最も頻繁に起こり、かつプロジェクトの根幹を揺るがすのがコミュニケーションのリスクです。
これは単なる「日本語が通じない」という言語レベルの問題だけではありません。
日本のビジネス現場では「1を聞いて10を知る」ような察しの良さや、「言葉にされていない意図を汲み取る」ことが美徳とされますが、海外では通用しません。
例えば、仕様書に書かれていない部分について、日本のエンジニアなら「文脈的にこうあるべきだ」と推測して実装してくれますが、オフショア開発では「書かれていないことは、やらない」のが基本です。
また、「ハイコンテキスト(文脈依存)」な日本文化に対し、多くの開発拠点は「ローコンテキスト(言葉通り)」な文化です。
「この機能、できそう?」と聞いた時、現地エンジニアの「Yes(はい、言っている意味は理解しました)」を、「Yes(はい、その機能は実装可能です)」と受け取ってしまい、納品直前に「実は技術的に難しかった」と発覚するケースも珍しくありません。
1-2. 品質(クオリティ)のギャップ
「バグだらけで納品された」という話もよく聞きますが、これには「品質に対する認識のズレ」が深く関わっています。
- 機能的品質: 仕様通りに動くかどうか
- 利用時品質(UI/UX): 使いやすいか、見た目が整っているか
現地のエンジニアは「機能的品質」を満たすことには長けていますが、「利用時品質」の基準が日本とは異なる場合があります。
ロジックとしては正しく動いていても、「ボタンの配置が1ピクセルずれている」「エラーメッセージがシステムコードのままで不親切」「日本語フォントの選び方が不自然」といった、日本人なら当然気にする細部へのこだわりが抜け落ちることが多々あります。
これを「品質が低い」と嘆く前に、そもそも「品質の合格ライン」の目線合わせができていないことがリスクの本質です。
1-3. プロジェクト管理と進捗遅延
「進捗率90%」から1ヶ月経っても完成しない、いわゆる「90%の壁」問題です。
オフショア開発では、物理的な距離があるため、進捗が見えにくくなりがちです。
報告書上では順調に進んでいるように見えても、実際には解決困難なバグを抱えていたり、仕様を誤解したまま作り進めていたりすることがあります。
また、各国の祝日や休暇事情(カントリーリスク)もスケジュールに直結します。
例えば、私たちが協業するベトナムには「テト(旧正月)」という大型連休があり、この期間は国全体が休みモードになります。
ここを計算に入れずに納期を設定すると、開発が完全にストップし、リカバリー不能な遅延を招くことになります。
1-4. コストと為替変動(円安の影響)
これは「コスト削減」を目的にオフショア開発を始めたものの、最終的な支払額が想定を超えてしまうリスクです。
一つは、前述したコミュニケーション不足や品質ギャップにより、手戻り(修正作業)が多発するケースです。
修正工数がかさめば、当然コストメリットは薄れます。
もう一つは、近年の急激な「円安」や現地の「人件費高騰」です。
契約当初は安くても、開発期間が長期にわたる場合、為替レートの変動によって日本円換算でのコストが膨らむ可能性があります。
単価の安さ(Rates)だけでなく、トータルコスト(TCO)を見極める視点が必要です。
2.実は一番怖い「発注者側(自社)」に潜むリスク

多くの失敗事例において、原因を現地パートナーのスキル不足に求めがちですが、実はそれ以上に深刻なのが「発注者(日本側)の準備不足」です。
オフショア開発は、国内開発よりも「伝達コスト」が高くなります。
そのため、日本国内のパートナーとなら暗黙の了解で済ませていた「曖昧さ」が、海を越えた途端に致命的な欠陥となって跳ね返ってきます。
ここでは、多くの日本企業が陥りやすい「自社内部のリスク」について解説します。
2-1. 仕様の「丸投げ」体質
「だいたいこんな感じで、あとはいい感じにお願いします」 日本国内の熟練したシステム会社相手なら通用するかもしれないこのスタンスは、オフショア開発では通用しません。
前述の通り、現地のエンジニアは仕様書に忠実です。
もし仕様書に「エラー時の挙動」が書かれていなければ、彼らはエラー処理を実装しないか、あるいは最も簡単な方法で済ませるでしょう。
これを後から「気が利かない」と責めるのはお門違いです。
「仕様書に書かれていないことは、実装されない」 この原則を忘れ、要件定義を詰め切らないまま開発をスタートさせてしまうことこそが、バグや手戻りを生む最大の要因です。
2-2. 社内の合意形成不足と仕様変更
これは、開発プロジェクトが中盤に差し掛かった頃、それまで関与していなかった上層部や現場担当者が突然現れて、「やっぱりこの機能も欲しい」「この画面はこう変えて」と言い出すケースです。
もちろん、アジャイル開発のように柔軟に仕様を変えていく手法もありますが、オフショア開発における仕様変更は、国内開発の何倍ものコストとリスクを伴います。
仕様が変われば、ドキュメントの修正、翻訳、現地リーダーへの説明、エンジニアへの伝達と、情報のバケツリレーが再び発生します。
この過程で新たな認識齟齬が生まれる可能性も高まります。
「走りながら考える」のではなく、「走る前に社内で徹底的に合意をとる」。
このプロセスを軽視すると、追加費用が雪だるま式に膨れ上がってしまいます。
2-3. 受け入れテストの準備不足
納品直前になって初めて実機を触り、「思っていた動きと違う」「業務フローに合わない」と大騒ぎになるケースです。
これは、発注側が「どのようなテストをして、合格とするか」という基準(受け入れシナリオ)を事前に作成していないことにより起こります。
開発会社まかせにせず、自社でも「ユーザー視点でのテスト計画」を立てておかなければ、品質の最終防衛ラインは機能しません。
「何をもって完成とするか」の定義が曖昧なままプロジェクトを進めることは、ゴールのないマラソンを走らせるようなものであり、非常に危険なリスクと言えます。
3.リスクを最小化する具体的マネジメント手法

ここまで、オフショア開発に潜む様々なリスクと、その原因について解説してきました。
「やはりオフショア開発は難易度が高い」と感じられたかもしれません。
しかし、これらのリスクは適切なマネジメントで乗り越えることができます。
実際に私たち新日本印刷が、ベトナムのパートナーと協業してBtoB受発注システム「WONDERCART」を開発した際も、言語や文化の壁に直面しました。
しかし、以下の4つのルールを徹底することで、日本の厳しい品質基準を満たすシステムの構築に成功しています。
3-1. 「口頭禁止」のドキュメントドリブンな開発体制
「言った言わない」の水掛け論を防ぐ鉄則は、すべての指示をドキュメント(文書)に残すことです。
WONDERCARTの開発では、画面遷移図、API仕様書、詳細設計書を徹底的に整備しました。
オンライン会議で口頭で補足説明をした場合でも、必ずその後に議事録や仕様書に内容を記載し、テキストベースで合意形成を行うルールを徹底しています。
「ドキュメントにない機能は作らない」という厳格なルールを設けることで、仕様の抜け漏れや認識違いを極限まで減らしました。
3-2. 視覚的なコミュニケーションツールの活用
言葉だけで仕様を伝えようとすると、どうしても解釈のズレが生じます。
そこで有効なのが、FigmaやAdobe XDなどのプロトタイプツールを活用した「視覚的なコミュニケーション」です。
静止画のデザインカンプだけでなく、「ボタンを押したらどう動くか」という挙動までシミュレーションできるプロトタイプを用意し、現地のエンジニアと共有します。
「百聞は一見に如かず」の通り、複雑なアニメーションや画面遷移も、動く見本を見せることで、言語の壁を越えて直感的に仕様を共有することが可能になります。
3-3. 現地の文化を尊重したチームビルディング
オフショア開発を成功させるためには、現地エンジニアを単なる「安い作業員」として扱うのではなく、同じプロジェクトを成功させる「パートナー」として接することが不可欠です。
私たちはベトナムの文化や習慣を尊重し、密なコミュニケーションを心がけました。
単にタスクを振るだけでなく、 「なぜこの機能が必要なのか」 「日本のユーザーはどのような課題を抱えているのか」 という背景(Why)まで丁寧に共有することで、エンジニアのモチベーションを高め、「指示待ち」ではなく「自律的」に動くチームを作り上げました。
3-4. スモールスタートと段階的リリース
最初から巨大なシステムを一気に作ろうとすると、リスクも巨大化します。
WONDERCARTの開発では、まずは最小限の機能に絞って開発し、小さなサイクルでテストとリリースを繰り返す手法を採りました。
まずはコアとなる受発注機能だけを開発して品質を確認し、その後に在庫管理、請求管理……と機能を拡張していく。
このように段階を踏むことで、万が一認識のズレがあっても早期に修正でき、手戻りのコストを最小限に抑えることができました。
4.主要なオフショア開発国のリスク比較

オフショア開発のリスクは、委託先の国によっても傾向が異なります。
かつては中国が主流でしたが、現在はベトナムやインドなど選択肢が広がっています。
それぞれの国の特徴とリスク特性を理解し、自社のプロジェクトに合った国を選ぶことが成功への第一歩です。
4-1. 国別リスク・特徴比較表
主要な4カ国(ベトナム・中国・インド・フィリピン)の特徴を以下の表にまとめました。
単なるコストの安さだけで選ぶのではなく、自社のカルチャーや求める品質基準に合った国を見極めることが重要です。
国 | 単価感 | 技術力 | コミュニケーション・国民性 | 主なリスク傾向 |
ベトナム | 低〜中 | 高 | 親日的で真面目。 | 人気集中によるエンジニア採用難。 |
中国 | 高 | 特高 | 技術へのプライドが高い。 | 人件費高騰でコストメリット薄。 |
インド | 低〜中 | 特高 | 自己主張が強い。 | 日本的な「阿吽の呼吸」は皆無。 |
フィリピン | 低 | 中 | 明るく英語が得意。 | エンジニアの絶対数が少なめ。 |
4-2. 各国の詳細なリスク特性
表の概要を踏まえ、各国の具体的な事情とリスクの背景を掘り下げて解説します。
それぞれの国の強みと、注意すべきポイントを見ていきましょう。
4-2-1.ベトナム(バランス重視の最適解)
現在、日本企業のオフショア委託先として最も人気があるのがベトナムです。
国民の平均年齢が若く、国家戦略としてIT教育に力を入れているため、技術力の高いエンジニアが豊富です。
また、親日的で勤勉な国民性は日本企業と非常に相性が良く、「真面目にコツコツ取り組む」姿勢が評価されています。
WONDERCARTの開発拠点として私たちがベトナムを選んだのも、この「コスト」と「品質・国民性」のバランスが最も優れていたからです。
4-2-2.中国(技術は高いがコスト増)
かつてのオフショア大国ですが、経済成長に伴い人件費が高騰しています。
AIや先端技術のレベルは非常に高いものの、コスト削減目的でのオフショア開発には不向きになりつつあります。
また、政治情勢や情報の取り扱いに関する法規制(カントリーリスク)も考慮する必要があります。
4-2-3.インド(欧米向け・英語必須)
世界的なIT大国で、数理能力に優れたエンジニアが多いのが特徴です。
ただし、インドは「契約社会」であり「議論文化」です。
「仕様書にないが、やってくれるだろう」という期待は一切通じません。
英語での高度な交渉力と、論理的なマネジメント能力が発注側に求められるため、日本企業にとっては難易度が高めです。
4-2-4.フィリピン(英語力は高いがリソースが少ない)
公用語が英語であるため、英語でのコミュニケーションに抵抗がない企業には適しています。
コストも安価ですが、ベトナムやインドに比べるとエンジニアの母数が少なく、大規模なチーム編成や、特定の技術スタックを持つ高度人材の確保に苦戦するケースがあります。
ここまで、国ごとの特徴やリスク回避策を見てきました。
しかし、どんなに優秀な国を選び、緻密な管理を行ったとしても、「ゼロからシステムを作る」ことには、一定の不確実性とリスクが常に付きまといます。
特に、企業の根幹を支えるシステム開発において、「失敗」は許されません。
では、そのリスクを極限まで「ゼロ」に近づける方法はないのでしょうか?
5.システム開発のリスクを「ゼロ」にする選択肢

コスト削減のためにオフショア開発を選んだはずが、度重なる修正で予算オーバーになったり、使いにくいシステムが出来上がって業務効率が落ちてしまっては本末転倒です。
特に、受発注管理のような複雑な業務フローを伴うシステム開発においては、「作らない」という選択肢こそが、最大のリスクヘッジになる場合があります。
5-1. スクラッチ開発のリスク vs パッケージ導入のメリット
自社専用のシステムをゼロから開発する「スクラッチ開発」は、自由度が高い反面、要件定義の難易度が非常に高く、失敗のリスクも最大です。
特にBtoBの受発注業務は、企業ごとの掛け率設定、承認フロー、在庫連動など、裏側のロジックが極めて複雑です。
これをオフショア開発で一から構築しようとすれば、膨大なコミュニケーションコストと、数千万円規模の投資が必要になります。
一方、すでに完成された「パッケージシステム」や「SaaS」を導入する場合、「開発失敗のリスク」はゼロになります。
なぜなら、システムは既に完成しており、動作が保証されているからです。
「開発する」のではなく「導入する」ことで、数ヶ月〜1年かかる開発期間を数週間に短縮し、コストも大幅に圧縮することが可能です。
5-2. ベトナムオフショアの成功事例「WONDERCART」
私たち新日本印刷が提供するBtoB受発注システム「WONDERCART」は、まさにこの「オフショア開発のコストメリット」と「日本品質の安心感」を両立させたプロダクトです。
WONDERCARTは、ベトナムの優秀なエンジニアチームと、日本の徹底した品質管理ノウハウを掛け合わせて開発されました。
「オフショア開発でも、ここまで高品質で使いやすい業務システムが作れる」という証明であり、同時に、これから受発注システムの導入を検討されている企業様にとっては、「開発リスクを負わずに導入できる、完成されたソリューション」でもあります。
もし貴社が「受発注システムの開発」を検討されているなら、ゼロから開発するリスクを負う前に、一度WONDERCARTをご検討ください。
私たちが乗り越えてきた数々の課題解決のノウハウが、このシステムには凝縮されています。
6.まとめ
本記事では、オフショア開発に潜むリスクと、その回避策について解説してきました。
最後に、オフショア開発を成功させるための重要ポイントを振り返ります。
- コミュニケーションの壁対策: 「言わないことはやらない」文化を理解する。
「口頭での指示禁止」を徹底し、すべてを文書化・可視化して伝える工夫が不可欠です。
- 品質ギャップの解消: 現地任せにすると「動けばOK」になりがちです。
日本基準の「使いやすさ(UI/UX)」を定義し、合格ラインの目線合わせを行いましょう。
- 発注側の責任と準備: 「丸投げ」は失敗の元です。
社内の合意形成と、詳細な仕様策定といった「自社の準備」こそが、プロジェクトの成否を握っています。
- 最適な国の選定: コストの安さだけで選ぶのは危険です。
国民性や技術力を見極め、自社のカルチャーに合ったパートナー(国)を選ぶことが重要です。
オフショア開発は、正しくハンドリングできれば強力なコストメリットを生み出します。
しかし、それには高度な管理ノウハウと、発注側の入念な準備が不可欠です。
「リスクをコントロールしながら開発を進める」のか、それとも「リスクのない完成されたシステムを選ぶ」のか。
貴社のビジネススピードと目的に合わせ、最適な選択をしていただければと思います。
オフショア開発の実力を、実際のプロダクトで確かめてみませんか? 当社、新日本印刷はベトナムパートナーとの協業により、複雑な日本の商習慣に対応した受発注システム「WONDERCART」を開発しました。 「オフショア開発でどのような品質のものが作れるのか確認したい」 そのような方は、まず「WONDERCART」の無料資料をご覧ください。 |
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