
情報漏えいやサイバー攻撃のリスクが年々高まり、取引先・顧客からのセキュリティ要求も一段と厳しくなっています。
特にBtoB取引では「ISMSはありますか?」「ISO27001は取得予定ですか?」といった質問を受ける機会が増え、これらの違いを正しく理解しておくことが欠かせない時代になりました。
しかし現場では、次のような疑問が後を絶ちません。
- ISMSとISO27001は同じもの?違うもの?
- 中小企業でも対応するべき?どこまで必要?
- 認証を取るべき企業と、取らなくても良い企業の違いは?
- 2022年の改訂で何が変わった?自社は対応が必要?
クラウド化・リモートワークの普及により、これまで想定していなかった情報の流れやリスクが生まれ、セキュリティ対策は会社の規模に関係なく、避けられない経営テーマとなっています。
その一方で、「ISMSとISO27001は名前は似ているけれど、どこがどう違うのか分からない」という声が非常に多いのも事実です。
本記事では、初心者向けに「分からない」方の疑問を徹底的に解消します。
【この記事でわかること】
|
これらを専門用語をかみ砕き、わかりやすく現場の目線で使える形にして解説します。
まずは、ISMSとは何か――その本質から順に整理していきましょう。
その前に、ISO27001についてまず知りたい方はこちらの記事でわかりやすく解説しています。 |
目次
1.ISMSとは?企業が守るべき情報セキュリティの仕組み

ISMS(InformationSecurityManagementSystem/情報セキュリティマネジメントシステム)とは、企業が扱う情報を守るための仕組み全体を指します。
重要なのは、ISMSが「特定のルール」や「セキュリティ製品」ではなく、企業の情報を守るための組織的な枠組みそのものだということです。
単にウイルス対策ソフトを入れたり、パスワードを強化したりするだけでは、情報セキュリティ対策としては不十分です。
企業が扱う情報は、システム、紙、口頭、クラウド、委託先など多岐にわたり、そこには日々さまざまなリスクが生まれています。
ISMSは、それらを継続的に管理・改善するための土台として機能します。
1-1.ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)の定義
ISMSとは、企業が保有する情報を安全に取り扱うための仕組み(マネジメントシステム)のことで、次のような要素で構成されています。
- 情報セキュリティに関する基本方針
- リスクの洗い出しと評価
- ルールを定め、運用し、改善し続けるための体制
- 教育・訓練、内部監査、見直しの仕組み
つまり、ISMSとは「情報を守るために組織がどう考え、どう動くかを定めたやり方」です。
1-2.ISMSが必要とされる背景
ISMSが求められる理由は、企業を取り巻く情報の扱い方が大きく変わったためです。
- クラウドサービスの普及
- リモートワークの一般化
- プライチェーン経由の攻撃増加
- 情報漏えいリスクの高騰
- 顧客・取引先からのセキュリティ要求の強化
これまでのように「社内ネットワークさえ守っていれば安全」という時代ではありません。
外部とのデータ連携、SaaS利用、社外メンバーとの協働など、企業の情報は常にリスクにさらされています。
こうした環境下では、「場当たり的な対策」ではなく、「継続的な管理」が不可欠になり、そのための枠組みがISMSというわけです。
1-3.ISMSが扱う「機密性・完全性・可用性」の3要素
ISMSは、企業が持つすべての情報をCIA(シーアイエー)と呼ばれる3要素で守ります。
※CIAといってもアメリカの中央情報局ではありません!
- 機密性(Confidentiality)
許可された人だけが情報にアクセスできる状態を保つこと。 - 完全性(Integrity)
情報が改ざんされず、正確な状態が維持されていること。 - 可用性(Availability)
必要なときに情報を利用できる状態を保つこと。
この3つがどれか一つでも欠けると、ビジネスの信頼性や継続性が大きく損なわれてしまいます。
ISMSは、これらを企業全体で維持するための仕組みです。
1-4.ISMS構築の基本プロセス(PDCA)
ISMSは「作ったら終わり」ではなく、PDCA(Plan・Do・Check・Act)サイクルを回し続ける点が特徴です。
- Plan(計画):リスクを洗い出し、必要なルールや対策を計画する
- Do(実行):実際にルールを運用し、教育や啓発を行う
- Check(評価):内部監査で運用状況を確認し、課題を見つける
- Act(改善):見つかった課題を改善し、仕組みをアップデートする
このサイクルを継続することで、変化する環境に対応できる強いセキュリティ体制ができあがっていくのです。
1-5.中小企業・非IT企業でもISMSが必要な理由
「ISMSは大企業がやるもの」と思われがちですが、今はまったく逆で、中小企業こそISMSが必要という状況になっています。
理由は次の通りです。
- BtoB企業の多くが委託先管理を厳格化している
- 大企業が「ISMS相当の仕組み」を取引条件にするケースが増えている
- SaaS利用・クラウド利用によって、中小企業も同等のリスクを背負う
- 1つの事故が取引停止につながりやすい
特に製造業やBPO、IT開発会社では、「ISMS整備」や「情報セキュリティの可視化」が取引継続の必須条件となりつつあります。
つまりISMSは、セキュリティ対策であると同時に、取引先との信頼契約の役割も担っているのです。
ISMSの役割や仕組みが整理できたところで、次に押さえておきたいのが「ISO27001」という国際規格です。
両者は似た名前ですが、実は役割も意味も異なり、情報セキュリティへの取り組みを外部に示す際の基準として重要な位置づけを持っています。
次は、ISMSと並んでよく話題に上がるISO27001について、その特徴や最新動向をわかりやすく整理していきましょう。
2.ISO27001とは?ISMSを国際基準として保証する規格

ISO/IEC27001(通称ISO27001)は、情報セキュリティを管理する仕組み(ISMS)が、適切に構築・運用されているかを評価する国際規格です。
ISMSが「仕組み」であるのに対し、ISO27001は「その仕組みが世界標準のルールに沿っているか」を第三者が確認するための「ものさし」にあたります。
ISO27001の認証を取得することで、
- 自社の情報セキュリティ体制が国際基準に適合している
- 第三者が審査し、信頼性を保証している
という事実を、顧客や取引先に対して客観的に示すことができます。
2-1.ISO/IEC27001(ISO27001)の基本と目的
ISO27001は、ISO(国際標準化機構)とIEC(国際電気標準会議)が策定した情報セキュリティ管理の国際規格です。
規格の目的は大きく次の3点です。
- 組織が抱える情報セキュリティリスクを把握すること
- リスクに応じた管理策(コントロール)を適切に選定すること
- 運用状況を継続的に改善する仕組みを持つこと
つまりISO27001は、「何をしなければいけないか」ではなく、どう管理し、どう継続的に改善するかの基準として設計されています。
そのため企業ごとにリスクや業務内容が異なっていても、自社に適した方法でISMSを構築できる点が特徴です。
2-2.ISO27001で求められる要求事項
ISO27001は大きく以下の2つで構成されています。
2-2-1.管理要求事項(本体部分)
ISMSの構築・運用に必要な
- 組織の状況
- リスクアセスメント
- 内部監査
- マネジメントレビュー
などのマネジメントプロセスを定めています。
2-2-2.附属書A(AnnexA):114の管理策(※2022改訂後)
情報セキュリティ対策として実施すべき具体的な管理策をまとめたものです。
例:
- アクセス制御
- 暗号化
- 物理的セキュリティ
- 運用管理
- 人的セキュリティ
- サプライチェーン管理
ISO27001は、ルールのひな形ではなく、自社に応じて選ぶべき対策を整理するための枠組みとして機能します。
2-3.ISO27001:2022改訂のポイント
2022年10月、ISO27001は大きな改訂が行われました。
従来の2013年版から約9年ぶりの更新であり、クラウド時代に合わせた大幅な見直しが行われています。
特に押さえておくべきポイントは次の3つです。
2-3-1.管理策の統合:93→114に再編成
従来の93管理策が114管理策に再編成され、より包括的で実務に沿った形に整理されました。
管理策は以下の4カテゴリへ統合されています。
- 組織的管理策(Organizational)
- 人的管理策(People)
- 物理的管理策(Physical)
- 技術的管理策(Technological)
クラウド利用やリモートワークに関する管理策が追加され、現代的なリスクによりフィットする構造になりました。
※管理策の総数は増えていますが、実務上は分類が整理されたことで実装しやすくなった側面があります。
2-3-2.クラウド/リモートワーク対応の強化
近年急速に広がったクラウドサービスと在宅勤務を前提に、関連する管理策が大幅に強化されています。
- SaaS利用のリスク管理
- ID管理・アクセス管理の高度化
- リモートアクセスの保護
- モバイル端末利用時の対策
企業の「場所に依存しない働き方」を支える対策が色濃く反映されています。
2-3-3.サプライチェーン・委託先管理の強化
委託先経由の情報漏えい事件が増えていることから、次のような領域が重点化されました。
- 委託先選定時のセキュリティ評価
- 契約におけるセキュリティ要求事項
- 委託先の運用状況のモニタリング
- 供給停止・障害発生時の対応
特にBtoB企業では、サプライチェーン管理が取引条件となるケースが増えており、2022改訂は非常に重要な意味を持ちます。
2-4.ISO27001認証の流れ(一次・二次審査など)
ISO27001認証は、以下のステップで進みます。
- ギャップ分析(現状と規格の差を確認)
- ISMSの整備(文書化・教育・体制整備)
- 内部監査・マネジメントレビュー
- 一次審査(文書審査)
- 二次審査(実地審査)
- 認証取得
- 維持審査(年1回)、更新審査(3年ごと)
審査は「書類の整備」だけではなく、実際の運用状況が伴っているかが重視されるのが特徴です。
2-5.認証取得に必要な期間・体制・費用の実態
認証取得にかかるコスト・期間は、企業規模や業務範囲によって異なりますが、目安としては次の通りです。
- 準備期間:6〜12ヶ月
- 必要な体制:情報セキュリティ責任者+関係部署の担当者
- 費用:数十万円〜数百万円(審査費+コンサル費)
特に費用・期間は
- 審査機関
- 審査範囲(部門や事務所の数)
- 社内の既存ルール整備の進捗
などによって大きく変動します。
中小企業の場合でも取得は十分可能で、むしろ最近は「企業規模に関係なく求められるセキュリティ基準」として普及が進んでいます。
ISO27001について理解が深まると、「ではISMSとはどう違うのか?」という疑問が浮かんできます。
名前は似ていますが、実は役割も目的も大きく異なります。
次の章では、ISMSとISO27001の違いをひと目でわかる形で整理し、混乱しやすいポイントを丁寧に解説していきます。
3.ISMSとISO27001の違いを理解する|仕組みと規格の関係を整理
ここまでで「ISMS=仕組み(マネジメントシステム)」「ISO27001=その仕組みを評価する国際規格」という大まかなイメージがつかめてきたと思います。
両者はよく同じ意味で使われがちですが、役割・目的・適用範囲のいずれも異なるため、まずは整理して理解することが大切です。
3-1.違い①:ISMS=仕組み/ISO27001=評価基準
最も根本的な違いがこちらです。
- ISMS:情報を守るための仕組みそのもの
- ISO27001:その仕組みが適切であるかを示す国際規格
例えるなら、
- ISMSは「安全な建物を建てて維持する仕組み」
- ISO27001は「建物の安全性をチェックする基準書」
のような関係です。
ISMSは企業が独自に運用できますが、ISO27001は第三者審査を受けることで「国際基準に沿っています」と証明できます。
3-2.違い②:ISMS運用の範囲とISO27001認証範囲の違い
ISMSは、企業全体で取り組む情報セキュリティの仕組みのこと。
そのため、組織全体に適用することもあれば、部署・業務単位で運用することもあります。
一方ISO27001は、「どの範囲を認証対象にするか」を明確に決める必要があります。
- 本社のみ
- 開発部門のみ
- カスタマーサポート部門のみ
- 全社一括
など、選択が可能です。
認証範囲は、企業の業務形態・リスク・取引先要件などに応じて決めることが重要です。
3-3.違い③:文書化・内部監査・改善の扱い
ISMSもISO27001も共通してPDCAサイクルを求めますが、ISO27001では次の点がより厳格に求められます。
- 文書化(方針・手順・記録)
- 内部監査(監査計画・報告書)
- マネジメントレビュー(経営層による見直し)
つまり、ISMSは「企業独自の運用方針に基づく運営」であるのに対し、ISO27001は「国際規格が求めるレベルの運用を示す必要がある」という違いがあります。
3-4.違い④:自社運用のISMSと第三者認証の価値
ISMSは企業内で運用できるため、「認証は取らず、仕組みだけ整える」という運用も可能です。
一方ISO27001は、第三者審査を受けて初めて「認証」になります。 第三者認証には大きなメリットがあります。
- 顧客・取引先への信頼性向上
- 入札・業務委託での必須条件をクリアできる
- セキュリティ投資の妥当性を説明しやすい
- 社内の運用改善が進みやすい
特にBtoB企業では「ISO27001認証を取得しているかどうか」が、そのまま企業としての信頼性を左右するケースも珍しくありません。
3-5.違い⑤:得意・不得意の比較
ISMSとISO27001の違いをわかりやすく表にまとめると次のようになります。
比較項目 | ISMS(仕組み) | ISO27001(国際規格) |
役割 | 情報を守るための仕組み | 仕組みを評価する基準 |
対象範囲 | 自由に設定可能 | 認証範囲を明確に設定 |
必須要素 | リスク管理・ルール運用 | 文書化・監査・改善の厳格運用 |
外部評価 | なし | あり(第三者認証) |
対外的信用 | 中 | 高 |
コスト | 比較的低い | 審査・更新費が必要 |
運用難易度 | 柔軟に運用可能 | 継続審査のため一定の負荷あり |
おすすめ企業 | 内部体制を整えたい企業 | 取引要件・外部信用が必要な企業 |
3-6.ISMSとISO27001の違いのまとめ
- ISMSは会社を守るための仕組み
- ISO27001はその仕組みが国際基準かどうかを示す認証
- ISMSは企業独自で運用できる
- ISO27001は第三者審査が必要
- 認証は信頼性・取引メリットに直結
- どちらが必要かは企業規模・業務内容・取引要件で変わる
ISMSとISO27001の違いを理解することで、自社がどこまで取り組むべきかを適切に判断できるようになります。
ISMSとISO27001の違いが整理できると、「では自社にはどちらが必要なのか?」という疑問が浮かぶのではないでしょうか。
そこで次の章では、業界・規模・業務内容に応じたケース別の選び方を解説していきます。
4.自社にとって必要なのはどちら?|ケース別の選び方
結論からいえば、必要な取り組みは企業の規模、業務内容、取引先要件、リスクレベルによって異なります。
ここでは、よくある5つのケースに分けて、それぞれに最適な選び方を解説します。
4-1.ケース1:中小企業・製造業の場合
特に中小企業や製造業では、最初からISO27001を取得する必要はない場合があります。
理由は次の通りです。
- 情報セキュリティの仕組み(ISMS)が未整備の場合、いきなりISO認証に進むと運用が追いつかない
- 内部体制の成熟度が低く、文書整備・監査体制が揃っていない
- 現時点で取引先からISO認証を強く求められていない
このような企業では、まずISMSの運用基盤を固めることが最優先です。
【おすすめの進め方】
- ISMSの方針を作る
- リスクアセスメントを実施
- 社内ルール・手順書を整備
- 運用を回し始める
- 必要になった段階でISO27001を検討
ISO認証は「いつでも挑戦できる」ため、まずは仕組み固めに注力するのが現実的です。
4-2.ケース2:SaaS/BPOなど、取引先要求が強い業界
SaaS企業・委託業務を請け負うBPO・クラウド系サービスなどでは、ISO27001認証はほぼ必須と言っていい状況です。
理由は明確で、
- 多くの企業が委託先評価の基準にしている
- SaaS利用者が増え、クラウドの安全性を証明する必要がある
- データを預かる業務が中心で、信頼性が最重要
- 新規営業で「ISO27001の有無」が選定条件になる場面が多い
最初からISO27001認証を視野に入れて進めることで、営業活動・商談・入札で得られるメリットが大きくなります。
【おすすめの進め方】
- ISMS整備とISO取得準備を同時進行
- 認証範囲はサービス単位で明確化
- 顧客説明に使える資料も準備しておく
4-3.ケース3:システム開発会社/スタートアップ
実は「ISO認証は取らない」という選択も十分にアリです。
特に以下を満たす場合は、ISMS運用のみで問題ないケースが多くあります。
- 顧客からISO認証の提出を求められない
- SaaSやBPOなど、データ預かり業務が中心ではない
- まずは内部体制育成に集中したい
- スタートアップでリソースが限られている
この場合、認証という結果よりも運用力を重視するほうが効果的です。
例えば、
- 社内のルールを整える
- リスク管理ができる
- 情報セキュリティの運用を回せる
- 取引先説明に耐えられる根拠を持つ
これだけでも十分に信頼を獲得できます。
4-4.ケース4:ISMSがある企業の場合
すでにISMSが運用されている場合、ISO27001認証を追加するかどうかは次のポイントで判断できます。
- 取引先がISO認証を条件にしている
- 入札・公的サービスで認証が必要
- 委託業務が増え、第三者評価がないと営業で不利
- 海外企業との取引増加で国際規格が求められる
- 監査や社内説明責任(ガバナンス)を強化したい
「内部の仕組みは整っているが、外部への証明がない」という企業にとって、ISO認証は大きな武器になります。
4-5.ケース5:外部委託/クラウドサービス活用企業の注意点
クラウド利用・外部委託が当たり前になった現在、企業規模に関係なく「セキュリティをどう管理しているか」を説明する責任が求められています。
その際に押さえるべきポイントは以下の通りです。
- クラウド責任分界点
クラウドサービスはどこまでが事業者、どこからが利用者の責任かが明確。
説明できないと、監査や取引先説明で不利になります。
- SaaSの利用管理
ID管理・アクセス権・ログ管理が適切でないと、どれだけセキュリティを整えても事故が起きやすくなります。
- 委託先の情報セキュリティ管理
委託先のミスで情報漏えいが起きる例は非常に多いため、評価・契約・モニタリングの仕組みが必要です。
クラウド化が進む今、企業規模にかかわらずISMS+クラウド管理の仕組みが不可欠といえます。
4-6.「ISMS/ISO27001の選び方」自己診断
4章のまとめとして、自社に必要な取り組みを判断できる自己診断をご用意しました。
まずは次の質問にYES/NOで答えてみてください。
| 自己診断チャート(YES/NOで判断) | ||
| ①取引先から「ISO27001認証」を求められることがある | YES | ISO27001の取得がほぼ必須 |
| NO | 不要 | |
| ②SaaS・BPO・開発など、データを預かる業務が中心 | YES | 営業メリットが大きいためISO27001が有利 |
| NO | 不要 | |
| ③業務がクローズドで、外部との情報共有が少ない | YES | ISMSのみの運用でも十分 |
| NO | 不要 | |
| ④社内のルール整備や教育がまだ不十分 | YES | まずはISMSの構築から(いきなりISOは非現実的) |
| NO | 不要 | |
| ⑤スタートアップでリソースが限られている | YES | ISMS重点→必要に応じてISOへ段階的に |
| NO | 不要 | |
| ⑥委託先やクラウドサービスを多用している | YES | ISMSをベースに、ISO取得の検討価値が高い |
| NO | 不要 | |
| 総合判断(タイプ別のおすすめ) | |
| ISMS運用から始めるのがおすすめ | 中小企業、製造業、内部体制を整えたい企業、スタートアップ |
| 最初からISO27001を狙うべき | SaaS、BPO、データ預かり業務、取引先要求が強い企業 |
| ISMSのみで十分 | 外部共有が少ない・取引要件が緩い・まず内部固めを優先したい |
| 既存ISMSにISOを追加すると効果的 | 新規営業で証明が必要、入札/委託が増える、海外取引がある企業 |
ISMSの構築やISO27001の準備は、正しい手順で進めれば難しいものではありませんが、多くの企業が共通してつまずく落とし穴がいくつかあります。
次の章では、実務で起こりがちな課題と、失敗しないためのポイントを分かりやすく整理して解説します。
5.実務でつまずきやすいポイントと失敗しない対応策
ISMSの構築やISO27001認証は、正しい手順を踏めば難しいものではありません。
しかし実務レベルでは、どの企業も似たようなポイントでつまずきやすいのも事実です。
ここでは、特に多くの企業がぶつかる5つの壁と、それを回避するための実践的なポイントをまとめました。
5-1.つまずき1:文書を作ることが目的化してしまう
| 解決策:実務プロセスを優先し、現場で使える文書にする |
ISMSやISO27001に取り組むと、「ルールを作らなきゃ」「文書を揃えなきゃ」と、文書作りそのものが目的になってしまいがちです。
しかし本来の目的は安全に業務を回す仕組みを作ること。文書は、そのための結果(アウトプット)にすぎません。
◆回避するためのポイント
|
文書が増えれば増えるほど、運用負荷は比例して増加します。
少なく・正しく・運用できる文書を目指すことが最も重要です。
5-2.つまずき2:内部監査が形骸化する
| 解決策:シンプルで使いやすいチェックリストを使う |
内部監査は、ISMSやISO27001において非常に重要な役割を持ちます。
しかし現場では、次のような形骸化が起きがちです。
- 毎年同じチェックだけして終わり
- 形式的なヒアリングで実態が見えない
- 報告書を書くだけで改善につながらない
◆解決のコツ
|
内部監査は重箱の隅探しではなく、仕組みの改善ポイントを見つけるための場です。
5-3.つまずき3:全社展開に時間がかかる
| 解決策:短時間で理解できる教育(スライド・動画・テスト)を用意する |
セキュリティの取り組みは、特定の担当者だけでは完結しません。
社員全員が一定レベルの知識を持っていないと、どれだけ仕組みを整えても「ヒューマンエラー」で事故が起きてしまいます。
◆実務で使えるポイント
|
特に中小企業では長時間の研修をなくし、短くわかりやすくが成功の鍵になります。
5-4.つまずき4:経営層の関与不足
| 解決策:経営メリットを明確にして巻き込む |
ISMSやISO27001では、経営層の意思決定・承認・レビューが欠かせません。
しかし現場では、「忙しいからまかせる」と丸投げされるケースも多くあります。
◆経営層を巻き込むコツ
|
経営層が関わるだけで、社内の理解度と推進スピードは驚くほど変わります。
5-5.つまずき5:クラウドサービス利用のリスクを甘く見る
| 解決策:クラウド管理のチェック体制を整える |
クラウドやSaaSの利用が増えるほど、セキュリティリスクの大部分は「社内で管理できない領域」に移っていきます。
特に多いのが、
- 共有アカウントの使い回し
- 権限設定が適当なまま
- ログが取れていない
- 契約中のSaaSが把握できていない(シャドーIT)
◆必要な対策例
|
クラウド利用が当たり前になった今こそ、設定ミスによる事故を防ぐ仕組みが重要です。
ISMSやISO27001は仕組みが分かっていても、実際の運用段階で「まず何をすべきか」が分からなくなることも少なくありません。
そこで次の章では、ISMSの構築からISO27001認証の準備、内部監査、クラウド管理まで、実践にすぐ使えるチェックリスト集をまとめました。
日々の運用や改善にも役立つ保存版の内容ですので、ぜひ自社の状況と照らし合わせながら活用してみてください。
6.ISMS/ISO27001の実務に使えるチェックリスト集

ISMSやISO27001に取り組む際、もっとも役立つのがチェックリストです。
何を確認すればよいかが明確になるため、
- 初めて取り組む企業
- 既に運用している企業
- ISO取得を視野に入れている企業
のいずれにとっても、非常に有用です。
ここでは、目的別にすぐ使えるチェックリストをまとめました。
6-1.ISMS構築のためのチェックリスト
まずはISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)を整える段階で確認すべき項目です。
◆基本方針・体制 ◆リスクアセスメント ◆社内ルール整備(文書化) ◆教育・周知 |
6-2.ISO27001認証に向けたチェックリスト
ISO取得に向けてできている必要がある項目をまとめたものです。
◆文書化と記録 ◆内部監査 ◆マネジメントレビュー ◆審査準備 |
6-3.内部監査チェックリスト
内部監査は運用が回っているかを確認する重要な工程です。
実務で使える形に落とし込んだチェックリストをまとめます。
◆監査計画 ◆監査実施(ヒアリング・記録) ◆監査後の対応 |
6-4.クラウド利用時のセキュリティ確認チェックリスト
クラウド利用が当たり前になった今、設定ミスが最も多い事故の原因です。
そのため、以下のチェックは必須です。
◆ID・アクセス管理 ◆システム設定・ログ ◆SaaS利用管理 ◆委託先管理 |
チェックリストを通じて、ISMSやISO27001の準備に必要な項目が具体的にイメージできるようになってきたのではないでしょうか。
一方で、実際に取り組みを始めると、「そもそもどちらが先なの?」「どれくらいの期間が必要?」など、多くの企業が共通して抱える疑問が必ず出てきます。
そこで次の章では、ISMSとISO27001に関してよく寄せられる質問をまとめ、実務の現場から見た本当に知りたい答えを分かりやすく整理しました。
導入前の不安を一つずつ解消していきましょう。
7.よくある質問Q&A
ISMSやISO27001の取り組みを進める中で、多くの企業が共通して抱える疑問をまとめました。
実務の現場から見た本当に知りたい情報に絞って、短く・分かりやすく回答していきます。
Q1.ISMSとISO27001はどちらを先に取り組むべき? A:基本的には「ISMS→ISO27001」の順番が現実的です。 |
Q2.中小企業でもISO27001は取得できますか? A:できます。最近はむしろ中小企業の取得が増えています。
社員数10〜30名程度の企業でも、問題なく取得できます。 |
Q3.社員数10名でもISMS/ISO27001は必要? A:必要性は業務内容によって変わりますが、社員数の大小は関係ありません。
小さな組織ほど1つの事故の影響が大きいので、規模に関わらず取り組む価値は高いと言えます。 |
Q4.認証取得までどれくらい時間がかかりますか? A:一般的には「6〜12ヶ月」が目安です。※準備状況によって前後します。
全体感として「1年以内」がもっとも多いパターンです。 |
Q5.文書はどれくらい作る必要がありますか? A:必要最低限で構いません。多ければ良いというものではありません。
「使える文書」を少なく正しく作ることがもっとも重要です。 |
Q6.Salesforceやクラウドサービスはどう扱えば良い? A:ISMS/ISO27001では「クラウド責任分界点」を理解することが必須です。
特にSaaSでは、設定ミスによる事故が非常に多いため、権限管理・ログ管理・アカウント管理は重点項目です。 |
Q7.ISO27001を取得すると営業メリットはありますか? A:大きくあります。特にBtoB・クラウド・受託業務では信頼の証明になります。
近年は「ISO27001取得が前提」という企業も増えているため、営業上のメリットは大きいと言えます。 |
Q8.ISMSだけ運用する選択肢はありますか? A:あります。認証を取らなくてもISMS運用だけで十分な企業も多いです。
ISMSは「内部の仕組み」なので、企業規模に関わらず柔軟に運用できます。 |
Q9.毎年の運用コストは高い? A:ISO認証を維持する場合、審査費用が毎年必要です。
ISMS運用だけなら大きな外部費用は不要で、内部時間とのバランスで決まります。 |
クラウド化・外部委託が進む現在、「システムそのものがどれだけ安全か」も重要な視点です。
新日本印刷が提供するBtoB受発注システム「WONDERCART」は、ISO27001(ISMS)を取得した開発パートナーと共同で構築しており、国際基準に基づいた情報セキュリティ対策を標準搭載 しています。
安心して業務をデジタル化できる受発注システムをお探しの方は、ぜひ下記より資料をご覧ください。
8.【まとめ】違いを理解した上でどう動くか
ISMSとISO27001は名前が似ていますが、役割も目的もアプローチも大きく異なります。
- ISMSは「情報を守るための仕組み」
- ISO27001は「その仕組みが国際基準であることを示す認証」
この関係性を正しく理解できると、自社に必要な取り組みがどこにあるのかが明確になります。
8-1.自社に必要なセキュリティ水準を見極める
企業によってリスクレベルも、取引先から求められる基準もさまざまです。
- 顧客情報を扱うのか
- 外部委託が多いのか
- クラウド依存が強いのか
- ISO認証が営業で必須になるか
これらを踏まえ、自社に必要なセキュリティ水準を現実的なラインで設定することが第一歩です。
8-2.まずはISMSの土台を整える
規模に関わらず、どの企業でも必要なのがISMS(情報セキュリティ管理の基盤)です。
- 方針
- ルール
- リスク管理
- アクセス権管理
- 教育・内部監査
こうした基礎が整っていないと、ISO27001認証はもちろん、日常業務の安全性も保てません。
8-3.必要であればISO27001認証を検討する
ISMSの仕組みが固まってきたら、取引先要件や業務内容に応じてISO27001認証の必要性を検討します。
特に次の企業では、認証の効果が大きく現れます。
- データを預かる(SaaS/BPO/開発)
- 審査・入札で認証が条件になる
- 取引先がセキュリティ基準を強化している
- 海外企業との取引が増えた
ISO認証は単なる規格取得ではなく、信頼の証明となる重要なビジネス資産です。
8-4.クラウド利用・委託先管理まで含めた全体最適へ
セキュリティ対策は「社内」だけで完結しません。
クラウド、委託先、外部システムなど、企業を取り巻く環境は複雑化しています。
そのため、ISMS/ISO27001に取り組む際はクラウド責任分界点・委託先管理まで含めて考えることが欠かせません。
- SaaS設定のミス
- 権限管理の放置
- 委託先の管理不足
これらが事故の主要因となるため、仕組みとして全体最適を意識した運用が必要です。
8-5.最後に:違いを知ることが「第一歩」
この記事で、ISMSとISO27001の違い、そして自社がどこから取り組むべきかの判断材料が揃ったはずです。
情報セキュリティは、一度整えて終わりではありません。
しかし最初の一歩を正しく踏み出せば、あとは仕組みに沿って、着実にレベルを高めていくことができます。
違いを理解し、自社にとって最適な次の一歩を選ぶ。
それこそが、これからの時代に企業が取り組むべき情報セキュリティ対策の「第一歩」となります。
#ISMS #ISO27001 #違い


コメント