
「そろそろ、FAXや電話での受注はやめませんか?」
アナログな受注体制が残る企業では、こうした意見がよくあがるのではないでしょうか。
けれど現実は「業界の慣習的に無理だ」と、立ち消えになりがちです。
メーカーや専門商社では、今も山のようなFAXの束を基幹システムへ入力する作業が行われており、事務スタッフに作業のしわ寄せが及んでいます。
受注が増えるほど入力ミスや「言った言わない」といったトラブルのリスクも増大しますが、人手不足の昨今、もはや人海戦術には頼れません。
しかし、いざWeb受注への移行を検討しても、「取引先への操作レクチャー」や「数千万円規模のシステム改修コスト」といった負担が高い壁になってしまいます。
こうした「取引先の事情」と「予算の限界」が絡み合い、結局「今のまま続けるしかない」という結論に至ってしまうのが、多くの中小企業の現実です。
本記事では、理想論ではない「現実的なデジタル移行」について解説します。
既存システムを活かし、取引先との関係を守りながら受注工数を削減するにはどうすればいいか。
現場に「次の一手」を考える余白を取り戻すための、具体的なステップを提示します。
【本記事でわかること】
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「現場の負担を減らしたいが、取引先の事情も無視できない」——そんな葛藤を抱える担当者の方へ、いかに無理なく効率化を進め、業務に「余白」を生み出すか。その具体的な方法を、現場視点で解き明かします。
目次
1.アナログな受注フローが招く「非効率」の実態

なぜ、非効率だとわかっていても、多くの企業がいまだにアナログな受注体制から抜け出せないのでしょうか。
そこには、単なる「古い習慣」だけでは片付けられない、複雑に絡み合った現場の苦悩があります。
まずは、現在の受発注フローが抱えている3つの大きな課題を整理します。
1-1.バラバラなFAXフォーマットと「手書き」による受注処理の煩雑さ
BtoBの取引においては、受注側が「このフォーマットで送ってほしい」と指定しても、なかなかその通りの注文書が届きません。
多くの場合、立場が強い発注側(取引先)が、使い慣れた独自のフォーマットで送ってくるため、受注側はそれに合わせざるを得ないという構造的な力関係が存在します。
- フォーマットの不統一:取引先ごとに注文書のレイアウトがバラバラで、品番、数量、希望納期といった必須項目がどこに記載されているかを毎回探す手間が発生する。
- 手書き文字の判読:癖の強い手書き文字や、送信時にかすれてしまったFAXを前後の文脈から推測して読み解く作業がミスを誘発し、事務スタッフの精神的な負担となっている。
- 情報の不備:項目が埋まっていない、あるいは品番が旧型のままといった不備があるたび、電話やメールで再確認を行う必要があり、一件の注文を確定させるまでに過剰な工数が費やされている。
1-2.多大な入力負担――アナログ業務の効率化を阻む壁
アナログな手段(FAX・電話)で届いた情報は、そのままでは自社のシステム(基幹システム)へデータとして取り込むことができません。
システムと連携するためには、人間が介在して「デジタルデータ化」する工程が不可欠となります。
- 「転記」という二重入力の強制:届いたFAX注文書やメールを見ながら、自社の基幹システムへ入力し直す作業。本来、取引先が発注書を作成した時点でデータは存在するはずだが、FAXで届く過程で一度アナログ化されるため、受注側で再度入力するというムダな二重作業が発生する。
- 注文増への脆さ:入力作業が「人の手」に依存しているため、繁忙期に注文数が2倍になれば、入力工数も単純に2倍になる。これに対し、スタッフを増員する「人海戦術」で凌ぐしかないが、教育コストや固定費の増大を招くだけでなく、作業人数が増えるほど連携ミスや入力ミスが起きる箇所も増えてしまう。
1-3.「履歴が見つからない」検索性の欠如と業務の停滞
注文を受けた後の「あの注文、どうなっていたっけ?」という確認作業が、実は現場の業務を止めてしまう最大の要因になっています。
情報の所在がデジタルで一元化されていないことが、あらゆる判断のスピードを鈍らせてしまうのです。
- チャネルの混在による「情報の散逸」:FAX、電話、メール、時には営業個人のLINEなど、受注経路が多岐にわたるため、特定の注文内容を確認しようにも履歴を遡るのが困難。
- 記憶と紙に頼った管理:「確かあの時、電話でこう言っていたはず」という個人の記憶や、ファイリングされたFAX注文書をひっくり返して探すなど、担当者が不在の場合、確認作業そのものが完全にストップしてしまう。
- 即答できないもどかしさ:取引先からの「在庫はあるか」「いつ届くのか」という問い合わせに対し、基幹システムやFAXを突き合わせて確認し、折り返す。この一往復のやり取りだけで、本来行うべき業務時間が奪われ、効率化を大きく妨げている。
このように、受注の入り口が「アナログ」である以上、どれほど社内の基幹システムを整えても、その前段階で膨大な「人の手」と「時間」が浪費されてしまいます。
しかし、この非効率は単に「時間がかかる」という問題だけでは済みません。
アナログ業務の真の恐ろしさは、こうした工数の積み重ねが、いずれ取り返しのつかない「重大なリスク」へと発展することです。
次章では、放置されがちな現場の人的ミスや属人化が、経営にどのような打撃を与えるのかを解説します。
2.放置できない「人的ミス」と「属人化」のリスク

前章で挙げたアナログな業務フローを「手間はかかるが、今のところ回っているから大丈夫」と放置することは、極めて危険です。
積み重なった「非効率」は、ある日突然、取り返しのつかない実害となって現れます。
2-1.FAX・電話特有の「言った言わない」が招く信頼失墜と経済的損失
アナログなやり取りや手入力の過程では、どれほど注意しても人的ミスをゼロにすることはできません。
紙に書かれた文字の読み間違い、キーボードの打ち間違い、あるいは電話での聞き間違いなど、人間が介在する工程が多いほど、ミスが発生するリスクも比例して増えていくからです。
- 発注漏れと入力ミスの必然性:アナログなやり取りや手入力の過程では、注文そのものの見落としや、基幹システムへの入力ミスが避けられない。
- 「言った言わない」のトラブル:電話での受注は特に注文の記録が残りにくいため、納期や数量を巡って「言った言わない」の食い違いが発生しやすく、取引先とのトラブルに発展する大きな要因となる。
- 利益を生まない「負のコスト」の増大:誤送による返品対応や再配送にかかる費用、そして謝罪に費やす時間は、一切の利益を生み出さないばかりか、本来得られるはずだった利益を削り、企業の信頼を損なうことにもつながる。
2-2.業務の「ブラックボックス化」による継続性の危機
アナログ業務の多くは、情報の管理が「個人の頭の中」や「個人の机の上」で完結してしまい、組織全体で状況が把握できない「属人化」につながります。
- ベテラン依存の危うさ:「この取引先の特殊な注文ルールは、あの担当者でないと対応できない」といった状況が常態化し、業務が個人に依存してしまう。
- 担当者不在時の停滞:担当者が休みだったり不在だったりすると、注文の進捗や過去の履歴が一切追えなくなり、取引先への対応が滞ってしまうリスクを常に抱えることに。
- 組織の継続性の喪失:業務がブラックボックス化していると、急な欠員が出た際や引継ぎが必要な場面でスムーズな技術承継ができず、最悪の場合は受注ラインそのものが止まりかねない。
2-3.本来の業務を奪い、成長機会を損失させる
アナログ業務のしわ寄せは、事務スタッフの入力作業だけに留まりません。
企業の成長を牽引すべき営業担当者の貴重な時間も、刻々と奪われてしまいます。
- 問い合わせ対応による「業務の断絶」:在庫確認や納期確認の電話が間断なくかかってくることで、営業担当者や事務スタッフの手がふさがり、提案活動や新規開拓といった本来注力すべきコア業務に集中できない状況に。
- 休日・時間外の連絡による弊害:土日や営業時間外にも、取引先からLINEや電話で在庫確認や注文の連絡が入るなど、対応を求められる場合も。こうしたプライベートの侵食は従業員の精神的な負担を増大させ、離職のリスクにもつながる。
これらのリスクはすべて、個人の努力や注意喚起だけで解決できるものではありません。
アナログな仕組みに依存し続ける限り、いつかは重大なミスや人手不足によって現場が破綻する日がやってきます。
重要なのは、こうしたリスクを未然に防ぐための「現実的な導入ステップ」を踏むことです。
次章では、現場の混乱を最小限に抑えつつ、確実にデジタル化を進めるための具体的な手法を解説します。
3.受注業務を段階的に効率化する「スモールスタート」の勧め

アナログからデジタルへの移行において、最も避けるべきは「全社一斉の強制導入」です。
急激な変化は社内だけでなく、取引先にも大きな摩擦を生んでしまいます。
現場の混乱を最小限に抑え、着実に成果を出すための「スモールスタート」の手順を解説します。
3-1.ステップ1:特定の取引先・商材に絞った実証実験
全ての取引を一度にデジタル化しようとすると、想定外のトラブルに対応しきれなくなります。
まずはFAX受注の比率が高く、デジタル化のメリットを享受しやすい取引先を特定し、小さな成功体験を作ることが重要です。
- 主要取引先やITに理解のある顧客の選定:FAX注文が多く、なおかつ信頼関係の深い特定の取引先を対象に試験導入を行うことで、運用上の課題を事前に洗い出す。
- 特定のカテゴリや商材への限定:全ての商材を一気にWebに載せるのではなく、まずは在庫の動きが激しい定番商品などに絞って運用を開始する。
- 現場の声を吸い上げる期間の設定:「注文の二重入力」などの懸念がないか、発注側にとっての使い勝手をヒアリングし、本格導入前に仕組みを微調整する。
3-2.ステップ2:既存の基幹システムを活用したデータ連携の設計
「Web受注を始めるには、数千万円かけて基幹システムを全面改修しなければならない」という思い込みが、多くの企業の足を止めています。
しかし実際には、今のシステムを活かしたまま「入り口」だけをデジタル化する方法があります。
- CSVデータを活用した「低コストなデータ連携」:既存のシステムに手を加えるのではなく、Web受注システムから出力した注文データを、基幹システムへ取り込める形式(CSVなど)に変換する。これにより、転記作業の自動化による業務効率化と、初期投資の抑制を同時に実現できる。
- フロント業務の切り出し:受注の窓口(フロント)だけを先にデジタル化し、まずは「現場の入力工数を減らすこと」に集中する。社内の全プロセスを一気に自動化しようとせず、最も負荷の高い部分から段階的に進めるのが現実的。
3-3.ステップ3:取引先側の「利便性」を最優先した環境づくり
デジタル化を成功させるカギは、取引先に「これまでより便利になった、楽になった」と実感してもらうことです。
自社の効率化だけを優先すると、取引先は離れてしまいます。
- 導入ハードルを下げる操作性:PCだけでなく、建設現場や移動中でも使いやすいスマートフォン対応のUIを提供し、操作の負担を軽減する。
- 発注側のメリットの強調:「24時間いつでも在庫確認ができる」「過去の注文履歴からワンクリックで発注できる」など、取引先にとっても業務効率化につながる点を明確に伝える。
3-4.ステップ4:ITリテラシーに合わせた段階的な移行
取引先のIT環境や習熟度は一律ではありません。
相手のペースに合わせたサポート体制を整えながら、時間をかけて浸透させていくのが重要です。
- 並行運用期間を設ける:いきなりFAXを廃止するのではなく、まずは「Webで注文すると納期回答が早くなる」といったインセンティブを設け、自発的な移行を促す。
- 成功事例の共有:先行導入した取引先での「ミス削減」や「時短」といった具体的な実績を事例として紹介し、他の取引先へも展開していく。
どれほど多機能なシステムであっても、現場の担当者が「今までのFAXの方がマシだ」と感じれば、運用は定着しません。
重要なのは、BtoB特有の複雑な商習慣(顧客別の価格設定など)をカバーしつつ、誰でも迷わず使える仕組みを選ぶことです。
次章では、こうした「現場目線」の条件を網羅した、受発注システムの具体的な選び方について解説します。
4.BtoB特有の商習慣に対応する「受発注システム」の条件

スモールスタートで確実に成果を出すためには、自社の商習慣にシステムを無理やり合わせるのではなく、BtoB取引特有の複雑さに対応できるシステムを選ぶ必要があります。
中小企業が選ぶべき受発注システムの条件は、主に以下の3点に集約されます。
4-1.顧客ごとの「掛け率・表示出し分け」ができるか
一般的なECサイトとBtoB向けの受発注システムの最大の違いは、ログインするユーザー(取引先)によって「見える情報」が変わる点にあります。
- 個別価格の設定:取引先ごとに「掛け率」が異なるため、ログインIDに紐づけて個別の仕入れ価格を表示できることが必須。
- 商品の出し分け:特定の顧客にだけ見せたい、あるいは見せたくない商品(専用品など)を、管理画面から制御できる柔軟性が必要。
4-2.基幹システムとの柔軟な連携が可能か
受注工数を削減する最大の鍵は、Webで受注したデータをいかにスムーズに自社の販売管理・基幹システムへ流し込めるかです。
- データ連携の簡便さ:高額なシステム改修を伴うAPI連携だけでなく、CSVデータの書き出し・取り込みによる「安価で迅速な連携」が可能であるか。
- 既存フローの尊重:現在の受注・出荷業務の流れを壊さず、フロント(入り口)だけをスマートに置き換えられる構造であること。
4-3.特殊な商材や注文形態を許容できるか
「カタログから選んで買う」という単純なフローでは完結しない、特殊な商材への対応力も重要です。
- スペック・単位の管理:液体(ドラム缶単位)や粉体、あるいは図面確認が必要な特注品など、商品画像だけでは判断できないスペック情報を管理できるか。
- 受注生産・締切管理:在庫概念がない「受注生産品」への対応や、当日の注文締め切り時間の厳密な管理ができるか 。
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これまで挙げた条件を網羅しつつ、中小企業が「小さく、賢く」デジタル化を始めるためのソリューションとしておすすめの受発注システムが「WONDERCART」です。
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5.まとめ:デジタル化は「現場の余白」を生み出すための投資
「業界の慣習だから仕方ない」「取引先が望まないから無理だ」と多くの中小企業が諦めてきた受注業務のデジタル化。
しかし、本記事で解説してきた通り、アナログな体制を放置し続けることは、単なる非効率に留まらず、人的ミスや属人化という形で企業の継続性を脅かすリスクを孕んでいます。
デジタル移行の本質は、決して取引先に不便を強いることでも、事務スタッフの仕事を奪うことでもありません。
転記や確認といった「付加価値を生まない単純作業」をシステムに委ねることで、現場に「人間でなければできない仕事」に取り組むための余白を作り出すことにあります。
- ミスのない正確な受注体制の構築
- 「誰でも対応できる」属人化させない組織づくり
- 営業担当者が本来の提案活動に集中できる環境の整備
これらは、人手不足が加速するこれからの時代において、企業が生き残るための必須条件と言えるでしょう。
まずは、全ての取引を一気に変えようとせず、信頼関係のある特定の取引先や、管理の煩雑な一部の商材から「スモールスタート」で始めてみてください。
既存の基幹システムを活かしつつ、現場が使いやすい仕組みを少しずつ取り入れていくことで、取引先との関係性を維持しながら、着実に業務を効率化していけるはずです。
受注のデジタル化という第一歩が、現場の笑顔を取り戻し、貴社のさらなる成長に向けた大きな力となることを願っています。
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